野村証券の「預かり資産基準」営業への転換は本物か!?
2018年12月17日 09:16
野村ホールディングスの今3月期中間期に異変が起きた。最終損益で60億円の赤字に転落した。上期としては実に7年ぶりの赤字となる。要因はリーマンショックの引き金ともなったサブプライムローン(住宅ローン担保債券)の不正販売を巡り米法務省と和解し530億円を支払ったことや、子会社清算に伴う一時費用とされる。
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が、深層部には、野村証券の歴史を大きく塗り替えようとする事由がある。同社は長らく別名「ノルマ証券」と呼ばれ続けてきた。歴代のトップ層は個人営業の実績を背景に出世階段を昇りその座に就いてきた。その「ドル箱」の個人営業に異変が起きている。
上半期の個人営業の税引き前利益は321億円。前年同期比36%と大幅な減少。何故か。野村証券の都内の支店長は「営業戦略の大転換の結果」とし、「片足で営業しているようなもの。数字が上がるはずがない」と溜息を洩らした。
証券会社の(個人)営業には「預かり資産基準」と「手数料基準」がある。森田敏夫社長は「預かり資産基準」に個人営業を大転換した。資産投資戦略をアドバイスし証券会社が扱う金融商品そして現金を顧客の口座に積み上げていく営業である。顧客が保有する証券商品をAからBへ言葉巧みに乗り換えさせ手数料収入を稼ぐ、「ノルマ証券」と揶揄される従来の営業を禁じたのである。
実は1999年の証券の手数料自由化後、野村証券にも何度となく欧米同様の「預かり資産基準」の営業に軸足を移そうとする時期があった。「預かり資産〇〇〇億円増」を旗印にし、「預かり資産を幾ら幾ら積み増すとおのずと手数料がこれ位増えていく」と時々のトップから聞かされた。だが結局は、地に足がつかなかった。「ノルマ証券」という染みついた体質から抜け出せなかったからである。
では、今回は本物か。確かに上半期の預かり資産(現金+有価証券)は6817億円と8四半期ぶりにプラスに転じている。また顧客が投資判断を任せる投資一任勘定は9月末で2兆8438億円と、半年で過去最高となる1400億円余り増加している。
が、肝心要の企業の通信簿ともいえる株価は本稿作成時点で400円台半ばに低迷している。上期の株式市場の大荒れ・軟調を反映したとも捉えられるが、1月の高値から300円近く水準を下げている。無理からぬ話でもある。上期の1株当たり利益は前年同期の30.79円から-1.78円に転落している。
果たして生みの苦しみなのか。母国の個人営業の大低迷は、リーマン・ブラザーズの欧州・アジア部門買収によるグローバル戦略にも大きな障壁となりかねない。転換が本物か否かは、時間の経過を見守る以外にない。(記事:千葉明・記事一覧を見る)