世界標準との比較で良いのか? 役員報酬 カルロス・ゴーンと豊田章男氏との比較(上)
2018年12月6日 11:30
■世界の現実
アメリカ14億円、ドイツ7.2憶円、イギリス6億円、フランス5.3憶円、日本1.5億円。これが1流と言われる企業のトップの平均報酬だ。その根拠を考えるには、やはりまずアメリカの事情を見るとよいだろう。アメリカがどうしてこれほど高いのか?欧州平均の2倍以上、日本の10倍近くとなっている。それには(1)産業の違い、(2)投資家の立場からの報酬、などから見てみよう。
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■(1)産業の違い
かつてのアメリカでビッグ3と言われた自動車産業は、国の産業としてトップの状態だった。しかし、最近クライスラーが脱落、伝統のフォードが脱落、そしてGMが事実上倒産して1千万台クラブからも脱落していった。こうしてアメリカの産業は、マイクロソフト、グーグル、アマゾンなどソフト産業が台頭し、世界を席巻してきた。これがどのような影響をもたらしているのかだ。
ソフト産業、ネット産業では、その多くは「製造」も「物流」も持たない。アマゾンなどは「物流」を持っている。対して、製造業は「製造」「物流」「サービス」と3つの産業を兼ね備えている。テスラが量産に苦労しているが、その様子を見ると「製造」をソフトや金融産業と同じように捉えてしまい、「製造」を理解できていなかった。量産工程には、多数の工程と多数の技術が必要だ。その多数の工程をこなす社員は、クリエイティブな才能でなく、決まった作業を繰り返し正確に行う根気を必要としている。ソフト産業とは別の才能だ。
マイクロソフトのビル・ゲイツは、当初「ガレージソフトハウス」と言われ、個人の才能で作り上げたソフトを売りに出して、巨万の富を稼ぎ出した。ソフトを売る場合、製造工程と言えるものは見当たらない。私も独自のソフトハウスを経営したことがあるが、開発はコーディングの段階をいうもので、製造業の量産工場で同じものを大量に正確に作り出す工程は皆無だ。強いて言うなら、ソフトをコピーする作業が製造に当たるだろう。
対して、自動車産業では巨大な製造工程が必要だ。この製造工程を「匠の技術」と勘違いしている人が大多数だ。官僚、大学教授、マスコミなど、自動車産業を研究している専門家、自動車ジャーナリストに至るまで、製造を認識できないでいる。私がソフトハウスを始めたころ、決算の打ち合わせを税理士と行っていた。「製造原価」としていた開発要員の人件費や種々の経費などを、税理士は「一般管理費」とした。確かに、ソフト開発部隊のプログラマーの人件費を製造原価とするかどうか考えるところだが、それまでは製造業の税理士として使ってきたので、40年前のことで、ソフト開発の内容を税理士でも理解できなかったのだった。どちらでも税の額は変わらないので、特に意見は言わなかったが、サービス業としての経理判断が適応されていたのであろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)