カラオケが介護に果たす役割
2018年12月4日 12:15
介護施設で入居者の機能維持・向上のために「公文式学習」を導入するケースは少なくない。また人工知能ロボットで高齢者相手のお喋りやレクレーションを行い、介護スタッフの負担軽減を図るという事例も増えている。が、「カラオケが介護に役立っている」といわれても、ピンとこない人が多いのではないか。
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業務用通信カラオケ(DAM)で業界首位の第一興商が、商圏拡大策として介護業界に足を踏み入れたのは2001年のこと。介護保険制度施行の翌年である。「カラオケの力を活かし運動・口腔・認知など生活機能の維持・改善を支援する」とし、新たに開発した「DKエルダーシステム」を引っ提げての参入だった。当初は「カラオケは娯楽機器」という先入観の壁に苦戦を強いられた。だがいまでは全国1万9000カ所を超える施設に導入されている。
肝心要のコンテンツは、東北福祉大学や鶴見大学などと産学共同で得た調査結果を基に開発されている。どんな役割を果たしているのか。第一興商では「施設の仲間と一緒に歌うことで心の元気を取り戻す。音楽・リズムに合わせることで身体を動かすことが容易になる。懐かしい映像を見ることで認知症の予防にもつながる。そして介護スタッフの負担軽減にも寄与していると認識している」と立て板に水。3カ月ごとに新しいコンテンツが追加されている。例えば音楽も童謡や昭和演歌にとどまらず、団塊の世代が高齢者層の仲間入りしたいまはグループサウンズ・フォークなどが取り入れられているといった具合だ。
第一興商はいま、こうした実績が評価され自治体から「介護予防事業」を受託している。具体的には高齢者向けの健康教室の展開。日本音楽協会が認定する「音楽健康指導士」がインストラクターになりDKエルダーシステムを使い、「音楽健康セッション」を実施している。
最近では「歌わないカラオケ」で高齢者の健康増進・維持を図ろうというカラオケも登場している。画面上にレオタード姿の女性が登場し諸々の体操をする。それに合わせ高齢者が身体を動かす。体操ばかりでなくクイズを出すことや、昔のニュース映像を見せることも可能。コンテンツは約800種。「ジョイサウンド」ブランドでカラオケサービスを展開するエクシングが仕掛け人。デイサービス施設などの導入が始まっている。(記事:千葉明・記事一覧を見る)