LIXILの迷走を故潮田健次郎氏はどうながめているのか
2018年11月27日 11:36
LIXILグループ(以下、LIXIL)の実質上の創立者:潮田健次郎氏が「あの世」とやらに旅立って7年半余りが経つ。あの世で潮田氏は今回のLIXILの迷走ぶりをどんな思いで見つめているのだろうか。生前に2度、取材でお目にかかった私としては「やはり自分の不徳のいたすところかな」と悔いているに違いないと思う。LIXILはこう発表した。「来年4月までに瀬戸欣也社長の退任、山梨広一社外取締役の社長就任、取締役会議長の潮田洋一郎氏(故潮田氏の長男)の取締役会長兼CEO復帰」。
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瀬戸氏は住友商事を経た後、MontaRo社長・会長など輝かしい経歴の持ち主。2015年に中国子会社の不正会計の責任を取る形で退任した藤森義明社長兼CEO(元日本GE会長)の後釜として、16年にLIXIL社長兼CEOに就任。そして次期社長となる山梨氏は富士フィルム・マッキンゼー・イオン等で要職を務めた人物。いずれも潮田洋一郎氏の要請を受けLIXILのトップの座に就いた(就く)人物。瀬戸氏の短期での解任は「今期収益計画の大幅下方修正」と説明される。
が、アナリストが語るように「一番の問題は洋一郎氏にある。そして故潮田氏の迷いがその根本原因」と考える。
洋一郎氏は歌舞音曲に造詣が深い御仁。だからといって「経営者に不向き」とは言わない。だが故潮田氏はLIXILの前身となる住生活グループ時代に、洋一郎氏を副社長から取締役に降格させた時期がある。そして定款に「住生活関連の事業以外は行わない」という内容の文言を加えてもいる。が、結局「血は水よりも濃い」ということか、自らの座を洋一郎氏に譲っている。
私は故潮田氏の最初の取材(現在の1対2分割に当たる、当時としては稀有の10割の無償増資を実施したトステム時代)で、その理由をこう聞かされた。
「取引相手の工務店には恥じ入ることのない商品を廉価で売る。それを実施するには社員にそれなりの待遇で臨まなくてはならない。そして株式を公開している以上、投資家に買い求め易い価格で安定株主になってもらわなくてはならない」。2回目は住生活グループの現状を取材した折りだった。ピーター・ドラッカーの「組織というものには共通点がない。しかし生け花教室にしても山岳クラブ、会社にしても一つだけ共通しているのはしっかりとした目的の有無だ」を引用し、「会社は存続する理を常に明らかにしなくては、成長などない」と断じた。
いま思う。「経営者に振り回されて、存在の理がぶれるようでは駄目だ」と故潮田氏は天国からLIXILに発信しているに違いない。(記事:千葉明・記事一覧を見る)