【コストカッター、カルロス・ゴーン(2)】日産がトヨタに敗れた原因は、生産技術の遅れ
2018年11月24日 20:15
■増産時の決算数字の現れ方と、減産時の違い
トヨタは、実質「無借金経営」だった。一方日産は、トヨタに対抗すべく新車の開発を続けるには借金が必要で、「有利子負債」を積み上げる状況に陥っていた。それでも拡販している状況で、売り上げが伸び利益が出ている状態であれば、銀行からの借り入れも順調で問題がないように見えていた。しかし、減産になるとすぐに利益が出なくなってしまった。それは、借入金利息の負担が大きいからであった。
【前回は】【コストカッター、カルロス・ゴーン(1)】 1999年、日産がトヨタに敗れた訳
新車開発に投資しながら、生産方式開発に気付かなかったことはどのような意味なのか?自動車産業が大きく発展し、アメリカと貿易摩擦を起こしていた時代、「トヨタのかんばん方式」は日本企業だけでなくアメリカの製造業の注目も集め、こぞって追いかけ始めた時代でもあった。
現在、IoTで先頭を走り、整備の効率化に成功し、第4次産業革命の先頭にいて、ラインでは「混流生産」が進んでいる建設車両のコマツ(小松製作所)も、その当時から懸命に多種少量生産を進めていた。それがわかるのは、当時のコマツの生産技術課長と直接話していたからだ。私の会社で、コマツとほとんど同じ製品を、全く同じ工作機械で生産していた関係で、お互い現場を見せあって議論した。当時は、わが社の考え方が、コマツより少ない資金で1歩進んだ生産方式をとっていたのが、私の自慢話だ。
井関農機も、「トヨタ7人衆」と呼ばれた人物の一人を引き抜き、多種少量生産を懸命に追いかけていた。わが社もそんな井関の方針に従い、ジャストインタイムでラインに納入するため、別途小型トラックまで用意して4時間ごと(自動車産業では1時間ごと)の納入として、リードタイムを縮め、在庫を減らすことに協力していた。わが社のように名もなき小企業が懸命にトヨタのかんばん方式を追いかけていたのだ。そんな時期に日産はどうしたことなのだろうか?これは、3社連合の現在の問題点ともリンクしている。また、カルロス・ゴーンの「功罪」を評価するときにも重要な視点だ。
減産時にコストを減らすには、固定費の削減が出来なければならない。しかし、日産は固定費削減ができないばかりでなく、利息の負担があった。決算上、利息は「利益」から減算することとなる。つまり、利息は利益で支払っていくものなのだ。それだけでなく、損益とは別に資金繰りとして借入金返済額が大きくのしかかり、最後は資金繰りに行き詰り、「ルノーに救済を求めることとなったのだ。
■日産がトヨタに敗れた原因は、生産技術の遅れ
つまり日産は、「トヨタのかんばん方式」に見られるような「多種少量生産」に後れをとって、【(1)相対的にコスト上昇】を招き、【(2)借入金を増やし】、【(3)赤字転落を早め】、【(4)資金繰りに行き詰った】のだった。
先日事実上倒産したGM、フォードなどが、現在の常識的な生産方式である「混流生産」が出来ていないなど生産技術で遅れていることは、景気の動向次第で危険な状態なのだ。それは、3社連合にも当てはまり、ルノー・日産・三菱の工場で相互に「混流生産」が出来なければ生産の「平準化」が十分でないため、「3社連合のシナジーが機能しない」となるのだ。
同じ生産台数『1千万台クラブ(VW・トヨタ・3社連合)』であっても、「VW・3社連合」は、トヨタと比べると未だに「生産効率は低い」と言わざるを得ない。生産台数世界3位に落ちたトヨタが「ただ生産台数が多くても・・・?」と言っている理由は、「減産時には固定費が生産台数に従って減少しなければ・・・」と言っているのだ。決してトヨタが負け惜しみを言っているのではない。現在、全社を挙げて進めているTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・システム)の狙いがそこにあるのだ。
問題は、「ルノー・日産・三菱」の3社連合において、この生産技術の遅れがないのかだ。これは、経営上極めて重大な点だ。3社のシナジー効果は、「合同仕入れ」などより、格段に資金需要削減になる生産の平準化などが出来る「生産技術」をどれほど3社共同で開発できているのかによるのだ。コストと資金量の問題において、カルロス・ゴーンが進めてきた方針がこれから先も通用するのか否かを考える必要がある。つまり、「グローバル発注と下請け」の問題が絡んでくるのだ
次は、「コストカットの次期と拡販の次期」の違いを考えよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)