大手資本と伍して闘う介護業界ツクイの強さ

2018年11月8日 08:34

 介護業界の草分け的存在といえるツクイの設立は、1969年。介護保険制度施行の31年前。在宅介護(デイサービス、訪問介護、訪問入浴など)を主軸にし、介護付き有料老人ホームやササービス付き高齢者向け住宅(サ高住)への進出にも積極姿勢を打ち出してきた。

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 言葉を選ばずに言えば、介護報酬改定(実質上引き下げ)という厳しい経営環境下で業界老舗としての存在感をあらためて見せつけようとしている。そのことは、手を緩めようとしない業務拡充姿勢に顕著に見て取れる。

 2017年3月期の「26.7%の営業増益、3円増配8円配」、前期の「35.7%の営業増益、2円増配10円配」に対し今期は「7%の営業減益(47億9500万円)」計画で立ち上がった。18年度の介護報酬改定で「デイサービス」の介護報酬が0.5%引き下げになったことが最大の要因。が、開示済みの第1四半期の営業利益実績(12億6000万円)は、期初想定の中間期予想に対し52%の進捗率を示した。最新号の会社四季報も業績欄の見出しを【独自増額】とし「営業利益51億円」と見通している。

 頷ける。前期1カ所増設し計14施設(1073戸室)となったサ高住が、運営開始3年目にして通期の黒字化に至った点が背景と指摘できる。同じ施設介護では有料老人ホームが27カ所(2122室)、稼働率95%超という状況にある。祖業でもあり現在もその手を緩めようとしない在宅介護の主軸の「デイサービス施設」も前期、新たに24カ所新設。計679施設の通所者数は開示されている9月時点で4万4523人と高水準を維持している。それは「訪問介護」「訪問入浴」も同様。

 好財務体質(18年6月時点で有利子負債に対する利益剰余金は4.8倍)ゆえになせる業、とするのは容易。だが今期に関してもIR担当者の口からは、介護報酬低下・新規案件の初期費用増加を前提としながら「引き続き事業所開設へ積極的に取り組んでいく」とする前向きな言葉がついて出る。澱みは全く感じ取れない。

 ツクイは介護士などの人材派遣業や紹介予定派遣業も展開している。いわゆる大手資本企業やマンション・ビルなどの箱物業者の介護関連業界への進出が進んでいる。そのこと自体は業界の再編も意味するが、高齢化社会の進捗の中で好感できる流れだ。が、そうした新規組は、介護事業の運営そのものに関しては「未体験組(しろうと)」が大方。新規組の担当者から、「当面の運営は実績派に委ね、徐々にノウハウを学び自己運営を」「実績派と連携(提携)し」といった言葉をよく耳にする。そして実績派の代表選手とし「ツクイ」の名を何回となく耳にした。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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