トヨタが「5大陸走破」に込めた創業家・豊田章男氏の魂 勇気ある取材を称賛
2018年11月4日 20:02
■勇気ある取材を称賛
「もっといいクルマを造ろうよ」と、2009年就任のトヨタ社長・豊田章男氏が掲げたテーマは、自動車メーカーが品質を保証し、さらなる技術革新を進めながら生き残りをかける姿であり、「真っ正直」であった。企業経営の「苦しさ」が私の喉元まで迫ってくる実感がする言葉だった。
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「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)」は誤解されて伝えられており、自動車ジャーナリストやトヨタ社員でさえも意味を理解できないでいる。ましてや販売現場のディーラーの営業マンは、大多数が興味すら持っていないようだ。37万人弱の社員を抱える巨大企業、国民の生活を支配するほどの影響力を持つ経営者が、社員のクルマに対する認識が極めて薄い中で、どの様にして自動車メーカーの体裁を保っていけるのか?
これほど巨大化し、世界に広がった組織を正常に保っていける施策を、私は思いつかない。いや正確には「ため息が出る」思いで、うなだれてしまう認識だ。私はこれまで、当事者になりたくない思いが先行して、出来るだけ「5大陸走破」の記事を無視してきた。このほど東洋経済ONLINEの記事「トヨタがひそかに進めた「5大陸走破」の裏側」を読ませていただいたが、「勇気ある取材だ」とつくづく感じる。また、自動車メーカーの挑戦を「5大陸走破」に見出した、眼力を称賛したい。
この記事を読んでほしい。筆者「山本シンヤ氏」が、私の見解としては「製造業の本質を捉えているとは言えない」ことをお断りしておくが、「豊田章男氏が全身でトヨタを率いていこうとしている」こと、筆者がここに「自動車メーカーの本質がある」ことを見込んでいることに敬意を表したい。
トヨタの種々の施策を見ると、トヨタが現在、創業家に率いられていることの幸せを見出せる。人材を育て、基礎となる『匠の技』を保存し、「人と人のつながり」を認識する。驚くのは、「成果は参加した人に託されている」ことだった。国家運営のように進むべき「道」を探し、人を育て、将来を託している。この動きは「創業家」でなければとれないものだ。トヨタ社員は、何かと日常の不服もあるのだろうが、「幸せ者」と思うことだ。この大変革期に創業家のリーダーを持った幸せを感じてほしい。
「TNGA」として具体的な方向性を掲げ、長期的に実行できる方策を進める努力の根幹を、私も「5大陸走破」に見出している。テスラの言動と比べてみれば、見出せる人も増えるのだろうか。
トヨタの苦労を見ると、どれほど小規模の企業経営でも、現役に戻る勇気は失せてしまった。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)