KYB・トヨタ・カローラスポーツのショックアブソーバーの先進性 オイル粘性に着目

2018年10月30日 17:34

 KYBの2018年3月期(2017年度)決算売上高は3,923憶円、そのうち自動車関連ショックアブソーバーは1,625憶円と売上高全体の41%を占め、KYBの収益の柱となっている。データ改ざんのあった建物の免振・制振オイルダンパーは、売上高25億円で0.6%ではあるが、国内シェアの45%を占めている。自動車オイルダンパー関係は世界第2位のシェアがある。

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 KYBは、自動車用オイルダンパーでの技術力は高く、つい先日、トヨタ・新型カローラスポーツに採用されたショックアブソーバーは、従来の設計とは違い、特殊なオイル粘性の特質を使ってロールを防ぎ、正確なハンドリングを可能としている。これまでのトヨタ車のイメージを払拭する出来であると評価されている。

 サスペンションは、上下動するバネの動きをオイルダンパーによって制御しているのが大多数のメカニズムだ。通常は、オイルが通る道筋にバネで抑えられた弁などに工夫して、セッティングしている。バネとオイルダンパーの調整次第で、柔らかくも固くも、セッティングはかなり自由にできる。さらに、このセッティングをオイルの流通弁の工夫などだけでなく、オイルそのものの粘性の特性を変えてセッティングしたのが、トヨタ・新型カローラスポーツのダンパーだ。

 具体例としては、スピードが速いままコーナーに侵入した場合、車体外側のオイルダンパーは急激に縮まる力を受ける。この時、オイル粘性が十分に固ければ、ロールが抑えられる。ロールが抑えられると正確なトレースが出来て、車は安定してコーナリングできる。それと反対に、通常、街中を直線的に走っている時、微細な振動を吸収するにはオイル粘性は低いほうが良い。これらの場面を両立させるため、通常は粘性が柔らかく、急激に力が加わった場合には粘性が上がるオイルが必要だ。

 発売の1年ほど前、乗り心地などで行き詰っていたトヨタ・新型カローラ開発チームであった。そして、KYBに将来採用予定であったショックアブソーバーの開発を前倒ししてくれるように異例の申し入れをして、間に合わせてもらったのが今回の製品だ。KYBは、その先進的商品を短期間で作り上げたのだ。

 このように、KYBは企画・設計技術力がかなり高く、これに製造・生産技術で品質管理が付いてきているのなら、評判通りのメーカーと言えることとなる。それが、万が一、耐震・制振オイルダンパーのような検査データ改ざんなどがあると、大きな問題となってしまう。0.6%に過ぎない、一部門の問題であってほしいものだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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