米スペース・タンゴ、パーキンソン病患者の細胞を宇宙ステーションで研究
2018年10月29日 11:49
宇宙の微小重力環境での研究や開発を行うアメリカのスペース・タンゴ社がパーキンソン病(PD)患者と一次性進行型多発性硬化症(PPMS)患者の細胞を国際宇宙ステーション(ISS)へ送ることがわかった。両疾患の患者細胞がISSに持ち込まれるのはこれが初めて。微小重力下においてパーキンソン病など神経変性疾患の細胞間相互作用などを調査する予定だ。
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今回発表されたのは、全米幹細胞財団(NSCF)、幹細胞財団サミット、ニューヨーク幹細胞財団(NYSCF)およびスペース・タンゴの共同研究によるもの。研究チームは神経変性疾患に焦点を当て、宇宙空間で細胞培養実験、特にパーキンソン病およびPPMS患者由来のiPS細胞に基づいた高度な細胞モデルの開発を行う。これらのiPS細胞を異なる脳細胞タイプやオルガノイドと呼ばれる「三次元的細胞集合体(臓器)」へ変換させるというものだ。その上で微小重力が、神経炎症の際のオルガノイド構築および、病変修復に関与するミクログリア(小膠細胞)に及ぼす影響を調べるという。
スペース・タンゴは、微小重力環境を新たな発見や革新のフロンティアと考え、医療や技術の分野で新発見を目指すバイオ工業企業だ。今回の研究では、ISSへの細胞輸送と総合的な機械設備を担っている。他の研究としては、微小重力下での不混和性流体の分離と混合の観察、ミールワームやミツバチの観察、大麦の成長に及ぼす影響などを行っている。直近ではアサ(大麻)をISSへ持ち込む計画も挙がっている。重力などの負荷のない環境で薬理学的成果を目指すという。
NSCFの会長兼CEOであるポーラ・グリサンティ博士は「この共同研究を通じて得られた研究成果は、神経変性がどのように、また何故起こるのかということについての理解を根本的に変える可能性がある」と述べる。航空宇宙学、生物工学、そして幹細胞の専門知識など様々な、それ以上に異なる分野の最先端技術を手に、我々人類は未知の領域へ踏み込んでいく。踏み荒らすことなく進んでいきたいものだ。(記事:秦・記事一覧を見る)