ドラマ『下町ロケット』に出てくる「ファブレス経営」(2) 借金が難しく、間違いは許されない

2018年10月27日 21:29

■テスラが気付いていなかった製造業のかなめ

 鍛造品であった材料の均一性についても発注者の油圧部品メーカーに警告して、ある範囲に収める努力をした。切削工具の材質もいろいろ試し、安定して切削できる見通しを立てていった。コストが見合う程度に収めることはもちろんで、全てが整い実用的製造技術として確立するには、かなりの日数を必要とした。テスラのイーロンマスク氏が気付いていなかったのは、こうした製造技術(加工技術)・生産技術なのだ。これは職人芸だけでなくそれを活かす、管理技術に注目しなければ役に立たない。それは材料や工具に精通した優秀な資材係であったり、工程を管理する組織能力であったり、事務能力であったりする。

【前回は】ドラマ『下町ロケット』に出てくる「ファブレス経営」(1) 「技術力」だけでなく「管理力」が必要

■ファブレス経営の難しさ

 ドラマ『下町ロケット』に出てくる「ギアゴースト」のようなファブレス経営が担わなければならないのは、企画・設計だけでなく、こうした製造技術開発を含めた生産能力を管理する技術だ。そのため優秀な企業に出会った時、ドラマのように心情論だけでなく、その機能を確保する意味で、買収や合併や資本提携など「下請け」としての体裁となって行くのだ。その場限りの取引では、ファブレス経営も成り立たない。

 日産自動車のグローバル発注と言っても、かなり固定した取引となってきているはずだ。企業は安定して「品質保証」をしなければ成り立たないことは、神戸製鋼、日産、スバル、スズキ、KYBなどの不祥事を見れば分かるはずだ。ファブレス経営を勘違いしないでほしい。

 かつてアコーディア・ゴルフがリート(REIT)を使ってゴルフ場を売却し、「管理を請け負う企業とする」と宣言したとき、「机上論だけのマネーゲームの言い訳」としか取れなかったのは、「ゴルフ場運営」についての技術開発を全く考えていなかったからだ。ファブレス経営は、ドラマ『下町ロケット』に出てくるように、資産がないため資金繰りの幅がないことを知っておく必要がある。つまり、広範囲に技術力、管理力を必要とするのは資産のある企業となんら変わりはなく、借り入れは難しい体質であることだ。ベンチャー企業が苦しいのはそうした体質であることが原因だ。ファンドは出資するとき、その幅を持たせる覚悟が必要だ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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