【トヨタとソフトバンク提携】明快な必然性 自動運転AIにはビッグデータの必要性

2018年10月6日 21:20

■資金効率で対局の方法論

 まず、トヨタは「トヨタかんばん方式」を世界に広め、現在、製造業で「トヨタ生産方式」を取らない量産企業はない。高度成長期の日本経済の牽引役を務めていた。しかし、生産方式が世界に広まり、現在では圧倒的優位さを持てなくなっている。これが、日本の製造業が足踏みして、日本経済の低迷になっている理由と考えるべきだ。

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 「トヨタ生産方式」は、資金効率において、フォード・GM方式に比較して「数千倍の資金効率」と見てもよい。産業革命の定義を変更する必要があると考えるほどだ。物流であるスーパーに対して、革新的資金効率と見られる「コンビニ」の効率の高さと比較しても「数百倍」と考えてよい。

 一方で、ソフトバンクが行ってきた事業には「製造」はほとんど含まれていないと考えてよい。「投資」としての「資金効率」、すなわち「投資効率」はM&Aによる拡大で済ますことが出来るビジネスモデルだと考える。むしろ、日産自動車のカルロス・ゴーン会長の展開がソフトバンクの展開に近い。ソフトバンクが製造業を手掛けると日産のような展開となるだろう。

 すなわち、ソフトバンクには「製造」がないため、マネーゲームで完結するビジネスモデルだと見ておくと理解しやすい。一方、トヨタは、製造業からサービス業に転出するにはM&Aが手っ取り早いのと、そのノウハウがないのだ。両者が組む「必然性」がそこにある。

具体的な事柄では、ライドシェアが普及すると、車はそのほとんどが「運搬手段」となる。すなわちエレベーターのように機能性は要求されるが、特段に趣味性などは必要がない存在となる。鉄道車両的になるのかもしれない。「タクシー仕様が大半となる」傾向だ。これでは、トヨタ自身が現在の規模で生き残ることは難しい。サービス業に転じる必要性があるのだ。

■ビッグデータの必要性

 自動運転を行うにはAIが必要となるのだが、そのAIを育てるには膨大なデータが欠かせない。つまり、AIとて「経験」が必要で、計算で求められる範疇は極めて少なく、「職人芸」をAIが身に着ける必要があると考えるのが近いであろう。しかも、少なくとも画像を認識するだけで数十万のデータが必要となるはずだ。また、人間の能力であれば「推察」つまり「1を知って10を知る」働きがあるが、AIに「推察能力」がどれほどあるのかは分からない。これはまだ、これからの開発テーマなのだろう。

 車の運転で言えば、これまでの運転経験から、「全体の景色」を漠然と見るだけで、ブラインドコーナーを曲がったその先の景色を予測できており、それに伴う危険性なども感じている時がある。「予測運転」の基礎と広がりだろう。人間であれば、そうした「無意識の予測」がすべての行動を支配しており、それをAIがどこまで「予測」出来るようになるのか?」楽しみでもあり、不安でもある。こうした機能を持たせるには、AIに与える「データ」が決めることになり、現在では実用にならないAIの出現が問題化し始めているなかで、ソフトバンクの持つ「ビッグデータ」は利用価値の高いものだ。

 例えば、ライドシェアで「呼ぶ前に車が来る」状態を作るには、絶対条件となる。AIは究極の「職人芸」を身に着ける必要性があるのだ。トヨタが求める提携先の大前提は、「AIの訓練ができる」企業であろう。

 ソフトバンクには「製造ノウハウ」がない。トヨタには「ビッグデータ」がない。車に組み込むAIを作り上げるための提携を考えると、両社は「必然の提携」に見える。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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