スバル、9.28追加調査の結果発表(3) 「管理する」とは、部下を牛耳ることではない
2018年10月4日 19:16
■管理者不在の組織
「お役所仕事」とよく言われるのは、形式的な日常業務に流され、しかも作業の目的を忘れて「楽をしたい」との意識が強く、「手抜き」意識が横行している姿だ。その一方で、「規約意識」は強くあるが「自分の都合で曲げてしまう」、つまりコンプライアンス意識を持てない怠慢な組織だ。これに近い状態を「スバル組織」に感じる。「管理者が存在しない」組織は、楽に流れて、逸脱してしまう。その結果は逆に大変になり、致命傷となることも起きる。三菱自動車の組織だ。
【前回は】スバル、9.28追加調査の結果発表(2) 「アンドン」を知らずして品質管理を語るな!
それと比較して、マツダの発表では、排気ガス検査でトレース運転に失敗していたことを知った担当者が、「悔しさをにじませていた」と記者会見で語られていた。それは、「正しく作業を行おうとして、気付かず失敗する」正常な人間の意識だ。マツダは「カイゼン」出来る組織であり、これまでも続けてきた組織なのだろう。
「カイゼンなど細かいことをしているから改革が出来ない」と指摘していた大学教授、自動車ジャーナリストたちがいたが、これは「素人」、いや「暴論」と感じる。どのような方針も一度で出来上がることはなく、また日々変化する。「日々のカイゼン活動」が当たり前のように出来ていない組織で、「改革」など考え付くはずもない。
■「管理する」とは、部下を牛耳ることではない
スバルの一連の不正において、「法律の専門家は品質保証の専門家ではない」こと、「品質保証のできる組織とは部下を牛耳る組織ではない」こと、「マニュアルの整備で事足りることではないこと」などを、スバル経営陣は理解しなければならない。そして、北米営業で「スバリスト」たちの連携、つまりボランティア精神が、販売に大きな力となっていることを理解してほしいものだ。「人間の力」は「自主的に動いた時」発揮されるものだ。命令ではない。「品質保証」は「神経をすり減らす作業」であり、「99.99%良品」の品質は「強制されて」できる仕事ではないのだ。
スバルは、出直す必要があるだろう。「開かれた、正直でまじめに取り組む組織」になるには、まず「経営陣のモラル向上」が必要だ。「投資感覚の経営者」が現代の経営陣には多く、尊重されている。しかしそれは、「短期投資家」の都合なのだ。スバルは北米営業で実績を上げる中で、社会人としてのモラルを失っていったようだ。そして、経営陣を決めるのは投資家だ。社会全体のモラル向上には、まず「投資家のモラル向上」を考えなければならないようだ。具体的には、「株主総会で支持される短期的利益を上げる経営陣」ではなく、「社会的モラルの高い人物」を経営者に選ぶことだ。自動車産業の「品質保証体制にとって必要な人材」は、少なくともテスラのイーロン・マスク氏ではないであろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)