NASAの宇宙探査機「オシリス・レックス」 小惑星ベンヌの画像を撮影

2018年9月3日 10:59

 アメリカ航空宇宙局(NASA)による宇宙探査機「オシリス・レックス(OSIRIS-REx)」が2年近くの旅の末、約220万キロメートルの距離から小惑星ベンヌ(Bennu)の姿を初めて撮影した。現在オシリス・レックスはベンヌのサンプル採取へ向けてのアプローチ段階へ入っている。

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 オシリス・レックスが試料採取を目指す小惑星ベンヌは、イトカワと同じくアポロ群(地球横断小惑星)に属する地球近傍惑星。平均直径は560メートルで“巨大小惑星”といささか奇妙な名前で呼ばれることもある。地球に接近する軌道を持ち、近年では地球への衝突可能性が最も危惧される小惑星としても知られる。2013年にロシア・チェリャビンスク上空で爆発した隕石は直径20メートルほどだったにも関わらず、その放出したエネルギーは広島原爆の約30倍だったという。直径500メートルを超えるベンヌが衝突するとなるとその衝撃は計り知れない。NASAによると衝突のXデーは117年後の2135年9月22日で、衝突の可能性はあくまで低いものの、まるで映画のような話が孫の代まで迫っているとは何とも驚きである。

 探査を行うオシリス・レックスはベンヌの詳細観測とサンプルリターン、ヤルコフスキー効果(小天体の軌道が熱放射などによって影響を受ける効果)の観測を主目的として2016年9月に打ち上げられた宇宙探査機。ディスカバリー計画の際に候補として初めて提案されたが、不採用となった経緯を持つ。名称変更や予算の問題を乗り越え、2011年にニュー・フロンティア計画の3番目のミッションとして正式に採用された。小惑星イトカワを探索した「はやぶさ」にならい「アメリカ版はやぶさ」と呼ばれることもある。

 今後オシリス・レックスはベンヌ周囲の観測やスペクトル特性の調査を行い、10月1日からは接近に向けて探査機を減速。中旬には探査機のサンプリングアームを伸ばして採取のイメージングを開始する。10月下旬には小惑星の全体像をつかみ、11月中旬には表面の特徴検出を始める予定だ。

 順調にいけばオシリス・レックスは2018年12月3日にベンヌへ到着し、2023年9月に地球へ帰還予定。JAXAの「はやぶさ2」との間で回収したサンプルをシェアする協定も結ばれており、今回のミッションは国境のない、文字通り宇宙的な時代の到来を感じさせる探査となるだろう。我々は地球からミッションの成功を祈るばかりである。(記事:秦・記事一覧を見る

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