花王が狙う化粧品業界トップの戦略

2018年8月10日 17:26

花王は、日本を代表する優良企業の1社と言って過言ではない。前12月期の「2.2%増収、10.4%営業増益、16円増配110円配」に続き今期も、「3.4%増収(1兆5,400億円)、5.0%営業増益(2,150億円)、10円増配120円配」と着実にかつ「29期連続増配」計画で立ち上がった。そして開示済みの6月中間期実績は前年同期比「1.6%増収、3.9%営業増益」と、上々。

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 そんな花王の「弱点」とされるのが、化粧品部門。資生堂・コーセー・ポーラがインバウンド需要を取り込み高価格帯商品の売り上げを伸ばす中で、後塵を拝し続けている。こうした状況が首位:資生堂に迫らんがため、2006年に粉飾決算で窮地にあった業界第2位のカネボウ化粧品を4,100億円で傘下に収めた起因にもなっている。が、ことは思う様に進まなかった。周知の13年のカネボウ化粧品による「白斑」問題も重石となった。

 花王は2018年5月、戦略の転換を公にした。現在、花王にはカネボウ化粧品と合わせ49のブランドがある。49のブランドのうち11ブランドに重点を置き、世界を相手に闘える商品体系を整えるとしたのである。

 例えば、カネボウ化粧品のブランド:センサイ。既に欧州・中東・アジアの百貨店や高級化粧品店で販売実績を残している。スキンケア商品が主だが、日本古来の最高級シルク「小石丸シルク」を配合した「日本らしさ」を前面に押し出したブランドだという。このセンサイを19年には日本市場にも導入し、20年には中国市場への投入を目指す。またカネボウの子会社:エキップから20年に新ブランドを発売し、遅れをとっていた「高価格帯」ブランドの拡充を図ることも明らかにされている。

 11ブランドには花王の高級化粧品ブランドの「エスト」も含まれているが、花王は7月27日に同ブランドから(希望小売価格/30g)3万円の「エスト・ザ・クリーム」を11月10日に発売すると発表した。斯界のアナリストは「断崖絶壁に立っての報復宣言」と一連の動きを表するが、花王が「本気」なのは販売方法にも示されている。従来「中級品」は美容部員による「カウンセリング販売」を導入していたが、今後は顧客自らの買い(セルフ)に委ねるという。人材も高価格帯商品に傾注するというわけである。

 施策は、日本では最長不倒の「連続増配記録」に花を添えられるだろうか。とくとお手並み拝見。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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