「大学目薬」が参天製薬の今日を決めた
2018年8月6日 11:51
参天製薬の創業は1890年。1世紀を悠に超えている。同社を調べて「知らぬは一生の恥、聞くは一時の恥」をあらためて痛感した。創業期は「カゼ薬」「セキ薬」「便秘薬」を取り扱っていた。「目薬」が登場するのは創業から9年後のこと。「大学目薬」。大ヒットとなった。もし「大学目薬」が、売れ筋になっていなかったら今日の参天製薬が存在していたかどうかも分からない。といわれるほどの大ヒット商品だったのだとされる。これを機に参天製薬は経営の舵を「目薬」に大きく切った。
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我々も「サンテ」ブランドのOTC目薬を薬局で目にし、手にする。が、同社の一般薬の総売上高に占める割合は、約1割。殆どは「医療用目薬」で占められている。主な治療剤(液)領域と商品名を指折り数えると、こんな具合になる。
★緑内障・高眼圧症治療領域: タブロフ点眼液やコセプト配合点眼液。
★角結膜症患治療剤領域: ヒアレイン点眼液やジクアス点眼液。
★抗アレルギー点眼剤領域: アレジオン点眼液。
★網膜疾患治療剤領域: アイリーア硝子体内注射液。前期で515億円を売り上げている。この目の病は網膜内の中心静脈が閉塞(つまる)ことから生じる出血やむくみがおこる病。高血圧・糖尿・緑内障患者に多いという統計もあり、老人に多い。
といった具合に参天製薬は、目の病ととことん闘う姿勢を貫いている。詳細はホームページに譲るが、5月初旬段階での「自社開発」「導入」を含め両手両足の指の数では足りない「医薬品開発状況一覧」が記されている。
収益状況は順調。前期の「13.0%増収、14.3%営業増益、14.8%最終増益」に続き今期も、「5.4%の増収(2370億円)、5.8%の営業増益(480億円)、5.5%の最終増益(353億円)」と着実な増収増益計画で船出した。
また至2030年度の中計も進行中。「売上高:年平均成長率6%以上、営業利益率:21%以上、ROE:年平均11%以上」という目標が掲げられている。
アナリストはいま、そして今後の参天製薬についてこう展望している。「国内市場の深耕に加え、海外部門の伸長が牽引していこう。前期はアジア市場の30.7%増を中心に海外の総売上高は緑内障・高眼圧症治療剤を軸に22%強の増収(約350億円)となっている。医療用目薬で“日本の”から“世界の”の歩みが始まっている」。
同社は「譲渡制限付き株式報酬制」を導入した。一定期間(執行)役員体験者が対象。経営の前線に立つ経営陣のインセンティブを高める施策だが、裏返せば一般株主との「価値の共有」。「前だけを向いて歩を進める」という宣言ともいえる。(記事:千葉明・記事一覧を見る)