フォード・マスタング(1) SUV人気に抗せるアメリカン・イメージリーダーのパーソナルカー
2018年8月2日 08:22
自動車史に対して確定した見方をするわけにはいかないが、「フォード・マスタングと日産・フェアレディZ」を同じジャンルと捉えることには、かなりの抵抗がある。歴史を振り返れば解釈の変化は大いにあり得るのだが、この両車種を自動車産業史としてとらえると、かなり視野は違ってくる。現在、クロスオーバーSUVというジャンルが出来た。これはほとんど「スタイル」で総称されているようだ。オフロードカーが発祥のようだが、ランドローバーは当然としても、最近ではポルシェ、ランボルギーニ、ジャガーまでSUVを名乗る車を開発している。マツダ・CX-3もSUVと認識されている。
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スタイルでの大まかな分類ならば、マスタングとフェアレディZもクーペボディーであることで同じジャンルとなるのであろう。しかし、クルマはスタイルだけで分類整理できるほど、単純でもなければ、奥のないものでもあるまい。「文化」と言うのなら、たしかに各国のクルマ文化は特徴があり、種別できると感じる。
また、車名が残るか残らないかは「その時売れているのか?」でほとんど決まってしまう。結論から言えば、「マスタング」は「アメリカンGT」の象徴なのであろう。だから、マスタングが「すたれ」切ってしまうことがあれば、トランプ大統領の支持者は消滅するのであろう。フォードは、2020年までに北米事業に占めるピックアップトラックやSUV、商用車など大型車の割合を90%にしようとしているが、マスタングだけは継続していくと判断した。
フォードの戦略は常に「利幅の大きい大型車」で、景気の良い時には利益をもたらし、日本車などに押される小型車の開発を怠ってきた。株主の意向を忖度しないといけないアメリカ企業の経営者の宿命だ。アメリカ資本主義社会「投資効率優先」、「短期的経営戦略の弱点」として1970年代から指摘されてきたことだ。これでは自動車の関税をゼロにしても世界でアメ車は売れない。
■生産方式から見たフォード・マスタング
まず、かつての「フォード量産システム」はベルトコンベアーを使った量産システムで、現代でもこれを量産システムと勘違いしている自動車ジャーナリストも多い。「フォード生産方式」と言われて一時代を築いた生産方式なのだが、これはヒトラーがぶち上げた「国民車構想」に基づく考え方で、VW、アウディ、ポルシェなどドイツメーカー発祥の量産の考え方だ。つまり、「大量に同じものを作って安くする」方法だった。現在も残るVW・ビートルがヒトラーの置き土産だが、日本最終販売のモデルは幾度もモデルチェンジされている。
フォードを追って、すぐにGMが「定期的にモデルチェンジ」して「購買意欲」を持続的にかきたてる方法論を考え付いた。フォード方式では劣化以外、生産設備も変えることはなかったのだが、「GM生産方式」では、もちろん金型をはじめ生産設備も変更する必要があった。そのため、ボディーの共通化など、現代に通ずる考え方が散見される。これでGMはフォードを抜き、現在でもフォードを凌ぐ生産規模を保っている。
その次に出てきたのが、日本が誇る「トヨタ生産方式」だ。この「看板方式」とトヨタ社内で呼ばれていた生産方式は「多品種少量生産」方式で、現在の量産製造で、この生産方式を取らない企業はありえないまでになった。この生産方式は資金量が大幅に減り(1/1000程度ともみられる)、「資金効率が極端に良くなる」ために、世界の製造業はこぞってこの方式を追いかけてきたのだ。日本の高度成長を支えてきた、「現在の日銀の金融政策にも勝る」とも考えられる、資金効率だった。現在、マツダはさらに生産方式を進歩させようと試み、トヨタにTNGAを起こさせるきっかけとなった。これが「第4次産業革命」に繋がっていく。
次は、ムスタング、セリカはスポーツカーではないことを確認しよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)