ボンカレーが本場インドに殴り込みをかける背景
2018年7月21日 09:32
大塚ホールディングス傘下の大塚食品が、世界で初めて市販用レトルトカレーを発売したのは1968年。半世紀前である。「5年で1億食を売り上げた」という伝説も残っている。これまでにも2003年に中国(上海)に現地法人を設立しているが、「半世紀」を迎えた今回はカレーの本場インド進出するという。具体的にはカルナタカ州バンガロー市に、食品・飲料の製造・販売の現地法人を設立し今秋をメドにボンカレー(レトルトカレー)の販売を開始する。大塚食品の姿勢は生半可ではない。用意周到。「まずは現地企業の社員食堂向けに売り込む」「ベジタリアンが多いインドでは野菜カレーを主体とする」「実績を積み、時間は定めないが市販用レトルトカレーとして侵食していく」としている。
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実は日本国内のレトルトカレーの商況は、決して悪くはない。調査機関のインテージによると「17年にレトルトカレーが固定ルー(カレー粉)を上回った」という。東日本大震災を契機にレトルトカレー=非常食の認識が高まったためと説明される。が大塚食品の関係者はインド進出を、こう解説する。「少子高齢化の進捗は(レトルト)カレーのニーズを縮小させる。インドはカレーの本場であり、最も馴染みの深い食べ物。しかも経済自体が急成長中であり、人口13億人はなににも勝る魅力だ」。少子高齢化に伴うビジネス構造の変革は、レトルトカレーの世界にまで及んでいるのである。
インスタント食品という範疇でいえばポピュラーなものとしてカップヌードルがある。私事だがもぐり込む大学も決まり実家で「あさま山荘事件」(1972年2月)のTV中継を見ていた折り、寒さの中で機動隊員が口に運ぶものに目をひきつけられた。なんだ、あれは。後で知ったがそれは日清食品が1971年9月に市販用として売り出したカップラーメンだった。カップ麺自体は1950年に米国で軍隊の携帯食として開発されていたが、市販用は日清食品製が世界初。世界ラーメン協会の推定によると、世界で食されたカップラーメンは2017年の1年間で1001億食。
果たしてレトルトカレーも「世界の食」となる日は来るのだろうか。(記事:千葉明・記事一覧を見る)