少子・高齢化時代に備える鉄道各社のあの手この手(上)
2018年7月16日 11:44
少子化時代の本格的進捗を示すデータが相次いで表面化している。沿線住人の減少は、鉄道各社の先々にとって「死活問題」と言って過言ではない。手をこまねいてはいられない。ここにきて脱本業に活路を求める動きが表面化、加速の感が強まっている。
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例えば海外でのホテル事業の展開などもその一つ。鉄道各社は国内で例えば「京王電鉄/京王プラザホテル」といった具合に、ホテル事業のノウハウを積んできている。が「立地条件(コスト)などを勘案すると、新たに国内のホテル事業を活発化するには無理が伴う」のが現状。となると新たな展開地は、経済成長著しい東南アジア。先陣を切るかのように手を大きく上げたのが、相鉄ホールディングス。神奈川県を地盤とする相鉄HDには「フレッサイン」「サンルート」ブランドでホテル事業(50店舗超)を展開してきたノウハウが蓄積されている。とにかく前3月期をみても「運輸業(電車・バス):2.6%営業減益(約82億円)」に対し「ホテル事業:2.3%増(約45億円)」という状況。
そんな相鉄HDが今回打ち上げたのが、経済成長が著しいベトナム・ホーチミン市での宿泊特化型ホテル。2021年春をメドに「地上17階・地下2階/客室数120」という大型ホテルの建設・営業。同社は既に今年2月に韓国・ソウルにアジア1号店を開設しており、第2弾。アナリストは「第3弾、第4弾の候補地を既に探している状態」という。
こうした動きは着実に他社にも伝播しつつある。例えば2020年春にタイ・バンコクに「ソラリア西鉄ホテルバンコク(仮称)」開設を予定している西鉄では、「タイではまだ珍しい温水洗浄便座付きトイレを導入」とやる気満々。京浜急行も「インドネシアのホテル運営会社と業務提携し、検討を進めている」としている。
いずれにしても、投資金額は中途半端ではない。アジア諸国には日系企業が多々進出している。訪れる日本本社社員も少なくない。またアジアの富裕層がこの間、観光客として日本を訪れた。彼らの目が高水準の日本のホテルを目の当たりにしたことで、現地での運営・管理に関する提携がスムーズになっているなどフォローの風が吹いている。
次回「下」は、電鉄各社の沿線に保有する土地の活用に言及する。(記事:千葉明・記事一覧を見る)