【スバル記者会見(4)】メディア記者の稚拙な技術的知識と吉永体制の限界

2018年7月10日 20:50

【ポイント4】:メディア記者の稚拙な技術的知識と吉永体制の限界

 スバル記者会見でのメディアの質問全般を見ると、まず「統計学」に疎いのがばれる。「品質管理」について素人である。また、組織には「ボトムアップ」機能が欠かせないことについて、スバルの経営陣、並びにメディア記者全体が知らないようだ。最近の社会システムにおいて、作業者からの意見を尊重しない風潮は感じていたが、ボトムアップシステムがコミュニケーションには必要な機能であることがどのようなことだか分からないようである。メディアの組織でも、ボトムアップ機能を持たせることが出来ていないのであろう。残念なことだが「聞き上手」がいなくなったようだ。つまり、作業は作業者が行うのであり、作業者が理解できないことは遂行できない恐れが高いのだ。

【前回は】【スバル記者会見(3)】「不良品はない」とする根拠がおかしい

 上司は、必ずしも作業者よりも専門作業者であるとは限らない。吉永社長(現・会長)も営業畑出身で、工場管理に知識・認識がない可能性はある。しかし社長であれば、それぞれの専門家の技術を通して、企業の全てに精通していなければならない。けれども、専門知識をすべての分野で持つ必要はない。専門家を使っていければよいのだ。むしろ専門知識は任せて、それを管理する知識が必要だ。

 残念であるが、私個人から見ると、吉永社長の品質保証についての知識は、最初から弁護士に調査を依頼したり、監視員を現場に置いたりなど、素人に近いものと感じる。大崎・品質保証本部長はさすがに詳しいようだが、その責任は「現場の仕事をすべて掌握できていないと果たせないものだ」と気づいていないようだ。つまり、「作業者の仕事の援護」をしてきた気配がない。もちろん、それは職制の長を介してのことだが、その概念を感じなかった。「品質保証の組織運営」をしたことがないようだ。管理者は直接作業をしていなくとも、作業がやりやすいように、作業者が気付いていなくとも援護している態勢が必須なのだ。

 記者会見を聴いていると、経営陣に「作業者の気持ちを察した部分」が感じられなかった。具体的には、「監視者」を検査場に付けた様子で分かる。なぜ作業者と膝詰めで話し合うことが出来ていないのか?企業の存亡の時であるのだから、作業者と話し合える機会がないと、抜け出せまい。弁護士にその役を任せたことで、スバルの現体質については分かってしまう。「社員は他人」であると認識しているのだろう。もし、「社員は同士であり、家族」と認識して日ごろから遇していたら、社員もこんなよそよそしいことはしなかったであろう。だから社員が、弁護士ではなく国土交通省の監督官に本当のことを告げたことをもって、すでに経営にはなっていない。このことに関して、メディアの記者は、自分と照らし合わせてもっと突っ込むべきだった。

 日ごろから社員の仕事上の悩みを何らかの形で拾い上げ、なすべきことを示し、怠慢を許さず、現場の援護を心がけていれば、社内のコミュニケーションが成り立つ基礎ができていることだろう。弁護士にその必要な諸策が見えるだろうか?

 次は、「吉永社長が組織に残ることに疑問がある」ことについて考えてみよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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