ハーレー・ダビッドソン海外に(1) トランプ大統領、結果的に資本に対抗する庶民の英雄か?
2018年6月27日 17:49
「皮肉なものだ」と感じたのはトランプ大統領だけかもしれない。「保護貿易」に進めば当然に起きることで、アメリカ一国が孤立しかねない危険をはらんでいる。
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かねてよりトランプ大統領がお気に入りのハーレー・ダビッドソンが、EUの報復関税に早くも動いた。アメリカ国内で生産してEUに輸出するハーレー・ダビッドソンは、在来6%の関税がかかっていた。これに対してEUは、アメリカによる鉄鋼・自動車などに対する関税に対する報復処置として、同じく自動車などに対して報復関税をかけるとした。特に、ハーレー・ダビッドソンに対しては名指ししたようだ。31%という大幅な関税となることになった。
これは、年間100憶円ほどの経費増大になるようで、とても社内努力によって受け入れられる規模ではない。ハーレー・ダビッドソンは約6,000憶円ほどの売り上げだが、利益率は20%を維持しているようだから当面は問題なさそうだが、売り上げの20%程度を占めるEU市場を無視することもできまい。それに、ハーレー・ダビッドソンをホワイトハウスに招くなど、「トランプ大統領のお気に入り」との印象が強くある。「貿易戦争」の様相を呈している現在、この印象を払拭しておきたいのであろう。
「保護主義」と「自由貿易主義」とのせめぎあいが始まってしまったが、本来、資本主義は自由貿易でなければ発展しえないシステムだ。大きな展望に立てば、「グローバル投資家・企業家」の立場なら保護主義は最も嫌う政策だ。最近では中国が自由主義経済を唱えることが多いのだが、共産党1党独裁政権で「何事が起きているのか?」と首をかしげたくもなる。
自由主義圏の先進国ではGDPが伸び悩んでいる。これは当然のことで、資本主義経済では格差が拡大していくのだが、それは消費者である労働者への富の配分が十分ではないからだ。日本経済では「給与」の停滞が続き、経済全体も停滞してしまっている。これは極めて単純なことで、「市場」である消費者の実質賃金が下落していたのでは、消費が伸びるわけもない。グローバル企業の設備投資が伸びても国内消費に繋がらないことは、誰が見ても明らかだ。また、海外生産が出来る現在の市場では、「給与は海外の労働者のレベル」に引っ張られて上がるはずもない。生産拠点が海外に流失して「空洞化」が起きることは、良く知られたことだ。
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