消防車開発で存在感示すモリタホールディングス

2018年6月13日 17:47

 新年度からモリタホールディングス(以下、モリタ)が、時代に即した消防車を市場に投入した。周知のとおりモリタは消防車で5割超のシェアを有す斯界のトップ企業。

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 開発・新販売車の名称は「ミラクルライト」。昨年3月の道交法改正により、普通免許で乗れる消防車(ポンプ車)の重量が5t未満から3.5t未満に変更となった。改正後に取得した普通免許証では3.5t以上が運転できなくなった。役人という安定した職種にもかかわらず、消防団員も「人手不足」状況にある。そこに加えて件の改正。人手不足で火災対応に支障が出ては、甚大な問題。そこで同社は普通免許でも消化能力の高いポンプ車の開発に取り組んだ。

 開発されたのが、ミラクルライト。小型ながらエンジンの動力で1分間に、2000ℓの放水が可能という代物である。業界に通じたアナリストは「モリタの開発力は、国際的にも認知されている」とし、こんな具体例を持ち出した。「林野火災用消防車」。

 世界で大規模な林野火災が多発している。林野火災は気象や生態林の状況により延焼方向が刻々と変化する。それを感知するための情報通信機能を充実させた一台。林野内は悪路がつきもの。そうした中でも走行放水を可能にした。そして最大の課題「水源」の確保では、独自開発したCAFS(圧縮空気泡消火装置)で少量の水での消化能力を高めた。

 言葉でいくら語ってもなかなかピンとこないかもしれないが、この消防車は2011年に世界でも最も権威あるとされる「IDEA賞」を受賞した。家電・家庭用品・車・医療機器等々、幅広い産業製品の中から、機能性+デザイン性に優れた新製品に贈られる賞だ。この時にはIDEA賞と並ぶ同趣旨の世界三大賞の一つであるiF賞(ドイツ)も受賞している。

 消化能力の高い消防車の開発は、我々の生活の在り様にも大きく影響する。だからこそ「世の森羅万象を映す鏡」とされる株価も、モリタに相応の評価を与えているのだろう。2016年3月期の初値(15年4月初値)で同社株を買い、今日まで保有していると株価だけで投資原資は2倍水準に増えている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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