ラブホテルは本当に五輪用宿泊施設不足を補えるのか(下)
2018年6月11日 17:10
判で押したように「2020年の東京五輪・パラリンピック時、訪日観光客向けの宿泊施設は1万室不足する」と指摘され続けている。そこで急浮上してきたのが「ラブホテル(最近ではレジャーホテルといった呼び方もされている)」の活用である。契機は2016年6月に政府が打ち出した方針。「訪日観光客急増によるホテル不足の解消」「比較的稼働率に余裕があるラブホテルの事業者が観光客向けの一般ホテルに改装することを後押しする」という2つの目的を前面に打ち出し、資金援助などの制度を整備するとしたことである。
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ラブホテルの稼働率を示すようなデータはどこにもない。が大阪商工会議所の「“大阪インバウンド”促進に向けての研究会 提言書について」では、大阪市内の宿泊施設数の実態をこう記している。「総軒数690軒」「ホテル226軒」「旅館73軒」「簡易宿舎108件」「ラブホテル283軒」。ラブホテルが全体の41%を占めている。こうした記述の裏には政府の方針も勘案すると「ラブホテルのインバウンダー向け活用」の方向が窺える。
では現にラブホテル側の動向はどうか。関西を中心にラブホテルチェーンを展開するホテルファイン(総建屋数40余)では、WEBサイト(Expedia内)も開設。英語対応も可能な施策を執っている。同社では「広々とした客室や大きなお風呂など、ラブホテルならではの設備・サービスが偏見なく受け入れられています」と手ごたえを示している。こんな事例もある。
訪日観光客にとり人気の地である浅草に「カオサンワールド浅草 旅館&ホステル」がある。13年に元ラブホテルだった建物を改装した。見てきたように記すと、特徴は「ラブホテルならではの設備を活かし改装した」点。具体的には、ロビーには各部屋の内装が一目で分かるルームパネルがある。客室にはラブホテル時代の豪華な大きな風呂が待ち構えている。宿泊客の9割が外国人。
核家族化等で、ラブホテルの元来のニーズは衰退傾向にあるとされる。「座して死を待つ」なら政府をバックとした援助を元に、新たな不動産運営への道を歩み始めるのも一法かもしれない。(記事:千葉明・記事一覧を見る)