自動車メーカーのプラットフォーム開発競争(3) 技術的影響は1.衝突安全性
2018年5月31日 11:32
■プラットフォームがもたらす技術的影響1. 衝突安全性
プラットフォームがもたらす技術的影響で、最も注目すべきは安全性だ。衝突実験をクリアすることが最低限のこととなる。クリアしていても、乗員の保護に関しては各車に差が出てくる。正面衝突だけでなく、オフセット衝突、サイド衝突と実車をつぶして実験することが義務付けられている。
【前回は】自動車メーカーのプラットフォーム開発競争(2)目的は決算書 利益率と生産技術の関係
日本車のアメリカ輸出が始まったころ、「日本車たたき」で非難されたのが、この衝突安全性だ。すでに50年ほど前となったが、当時はベンツ、BMWなどと比べると、日本車はかなりの差があった。つまり、日本車が劣っていたのだ。だから、当時のベンツの営業マンの殺し文句は「300万円で命が買えるのですよ!」だった。筆者がBMW購入を決めたのも、たとえ全損するほどの事故であっても、居住空間は潰れずドアが開け閉め可能の事故車を見たからだった。
この衝突安全性能を確保することは、プラットフォームを造るにあたって最重要課題だ。強度を増し、クラッシャブルゾーンを出来るだけ大きく取り、乗員がケガしないような破損を考えるのには実験が必要だ。現在、自動車メーカーでない家電メーカーなどがEVに参入して造った車、あるいは中国車の性能を見るとき、ユーザーが最も注意すべき性能だ。見えない部分の技術レベルを見抜かなければならないのだ。
■EVが中国市場中心で成り立つ訳
EV製造は他業種の参入が簡単だと言われているが、この衝突安全性1つとってもノウハウの塊であり、簡単に取得できるものなのであろうか?ゴルフカート並みの軽車両ならともかく、30km/h以上で走行する車では、現在の中国車両は過去の中国市場でしか販売できない。また、人権意識の整ってきた現在の中国市場では売ってはならないレベルの安全性と懸念する。
そこで問題となるのは社会の文化レベルであり、人がケガすることまで配慮できる「人権」意識が問題だ。これまでの中国社会の「人権」意識では、高速鉄道が事故を起こしても、原因究明の社会システムが機能せずに葬り去る意識が先行してしまう。だから、自動車の安全性が十分担保されていなくても販売することを許可してしまい、購入する人がいれば市場は成り立ってしまう。
人命を十分考慮できない巨大な市場が成り立ってしまえば、安全性の確保が不十分な車でも造られてしまう。そして、お金が回り始めれば、それが力となって世界を支配できることになるわけだ。それは、人権が十分担保されない世の中だが、経済水準が上がれば人々は許してしまう。すると、「ガラパゴス状態」となった日本の品質水準が取り残されてしまう。世界では通用しない高い品質水準だ。家電においてはつい先ごろまで、いや現在でも進行しつつある現象だ。
次は、プラットフォームと操縦性能について考えてみよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)