自動運転をつかさどるAIの学習法Deep Learning(深層学習)(上) 法則性を見つけ出す
2018年5月4日 07:13
最近では、AIが車の自動運転で注目され「万能」のように語られている。AIの学習機能は何をしているのか?「物事の本質をつかむコツ」がそこにある。「情報社会」と言われ、「情報量が多い者が生き残る」と言われて、かなりの時間が経った。ビジネスマンを自認する人々が日夜、情報収集に明け暮れている。そこにAIが登場し、「自らの仕事を取られる」と言われてもいる。
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データベースは至る所にあり、「個人情報」に相当するデータが、現実には広く閲覧されている。これは身近な存在だが、では「これらのデータをどのようにAIが分析しているのか」が「いまいち、よく分からない」と感じている人が多いことだろう。
■試行錯誤の連続から法則性を見つけ出す、それが経験・Deep Learning(深層学習)
「AIと人間の関係性」は、これまでの「コンピュータと人間の関係性」と、どのように違っているのだろうか。そこでコンピュータシステムと人間の働きの関係性で良い例を挙げてみる。
あらゆる製造業に関わる人々は、「材料取り」「歩留まり」との言葉を聞いているだろう。「材料から必要とする部品を切りだす(材料取り)」とどうしても無駄な部分が出て、材料を100%生かすことが出来ない(歩留まり)。例えば、「洋服の生地から必要な部品を切り取る」ときをイメージしてみよう。慣れてくると簡単だろうが、洋服として縫い合わせるために都合の良いように部品を定め、生地を無駄にしないように配置するのは、結構経験が必要になる。もちろん、仕上がりで着やすくなるようにすることが必須条件なので、大変だ。
自動車などの製造業では、設計するときから板厚ごとの部品の切り出しに注意しなければならない。特に多種少量生産となってくると、同じ部品が少ないので、形の違う部品を組み合わせて「歩留まり」を少なくしなければならない。これは、部品製造のサプライヤーにおいて、経営を左右するほど重要な役割なのだ。
この仕事をコンピュータにやらせない手はない。半世紀ほど前から試みられてきたが、鉄道の運行ダイヤと共に困難な仕事とされてきた。ある新日鉄配下のシャーリング工場で、プログラム開発が試みられてきた。当時の「スーパーコンピュータで1昼夜はかかる」と言われていた。現在のコンピュータの性能は、当時の百万倍とも考えられるので、Windowsマシンのパソコンでも上級マシンであれば可能であると感じる。
そのシャーリング工場では、材料取りの作業100%をコンピュータで行うことを考えていたのだが、私は「その作業の20%を人間が受け持つ」こととして考えていた。この作業を人間が全てやる場合は、多くは1/10のモデルを作り、実際に1/10の鋼板材料の図の上で部品を並べて、試行錯誤するのだ。これは手間がかかり、長い時間がかかる作業となっていた。それは「営業が発注を受けても材料費の見積もりがなかなか出ない」となっていたのだった。
そこで製品の発注を受け、図面が提示されたのならその場で、少なくとも数分で概算を出せるようにしたかった。半世紀ほど前、ようやく発売されてきた「ポケットコンピュータ」で電卓を使うように計算できることを目標とした。すると20%程度の仕事量だが、人間が前提条件を決めれば、計算できることが分かってきた。
何しろポケットコンピュータの性能は、BASICインタプリタがROMの形で搭載されているだけ。しかも200ステップほどしか容量がないので、現代のスマホにも遠く及ばない。ほとんど電卓の性能と考えなければならない。そこで「5つの寸法だけを人間が計算」して入力すれば、歩留まり計算と材料費の計算が一瞬で出せるようにしたのだ。その時、1/10の模型を使っての作業を必要とせずに行えるようにする考え方が、データ処理の基本であった。それはまさに、現在AIの学習法として注目されるDeep Learning(深層学習)の概念だった。つまり「法則性」を見つけることだった。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)