EV時代の素材は?マルチ・マテリアル・ボディ(上) 「100kg軽量化で1km/L燃費向上」
2018年5月2日 06:51
■軽量化が基本中の基本
Co2排出量の削減が叫ばれる中、EV化が進められている。足元をよく見ればEVにしても発電が問題となり、結局のところ、クルマが走ればCo2が排出される。かといって、今さら車を少なくすることもできない。このまま経済性を最優先にして生産拡大を続けようとするのなら、台数を増やす代わりに重量を削減すべきとなる。
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そうなると重量制限を設ければよいのだが、大型車・豪華な車は造れなくなる。そこで、素材の軽量化が大きく商品力に関与してくることとなる。それで素材の革新が進んでいくのだが、もう1つの絶対的基準がある。それは「経済性」、つまり低コストの必要性だ。よって、安く・強く・軽量な素材の開発が進んでいく。またそこには「造りやすさ」が求められることにもなる。それもコストを大きく左右するからだ。
■世界の自動車メーカーの対応
軽量化の試みは、はるか昔から進められてきた。現在との違いはその「動機」だ。昔は「走る性能」を追求することだった。しかし現在は「燃費向上」だ。「100kg軽量化すると1km/L燃費向上する」と言われている。条件が種々あるので一概には言えないが、おおよその基準になる。
すると「出来るところから軽量化する」となり、素材が混在して、「マルチ・マテリアル・ボディ(多種素材車体)」となった。もっとも簡単なのは、ボンネットなど車体強度に関係ない部位の材質変更だ。鉄板からアルミに変えることが以前より行われてきた。しかし、アルミは鉄板よりも高価となる。また、車体強度の必要な部位では不利となることもある。そこで急速に普及したのが、ハイテン(高張力鋼)だ。
これまで自動車のボディに多く用いられてきたのは、SS材(俗に生材)と呼ばれる鋼材だ。価格も安く加工しやすい。その鋼材の強度を表すのに用いられているのが、「引っ張り強さ」だ。これは両サイドから引っ張って、ちぎれるまでの力で表す。高張力鋼(SM材)だが、強くなるほど炭素含有量が多くなっていく。
■素材と加工技術
問題は、強度が増すほど加工が難しくなることだ。この鋼材の特性をうまく利用しているのが「日本刀」だ。元祖ハイブリッド素材と言ってよいだろう。刃先は固い高張力鋼だが衝撃にもろいので、折れないように背の部分には衝撃に柔らかく耐える生材を合わせて鍛造している。ライフルの弾を切り裂く鋭さと粘り強さを見せる特性は、「洋刀」にはない特性だ。優れた特性だが、その製法は何度も鍛造しなければならず、量産には向かない。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)