【仏マクロン大統領・カルロスゴーン・日本政府の三角関係】カギを握るのはだれ!
2018年4月18日 07:39
任期は4年。2022年6月にはカルロス・ゴーン氏のルノー取締役の任期は切れる。今年2018年6月のルノー取締役再任に当たって、フランス政府は経営陣の若返りを求めた。それは「ルノー・日産・三菱」の三社連合を維持し、フランスでの日産車の生産数を増やしたいとの思惑があるのだ。マクロン大統領は、自身の支持率を維持するため、フランス国内の雇用を創出する必要に迫られているようだ。
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このような政治的思惑からの大株主の動きに対して、ビジネスモデルとしての「世界各地の工場の稼働率をどのようにするか?」とは、必ずしも一致しない。また、日産自動車の「日本国内での生産規模の縮小」については、日本政府の思惑もある。当然に日本国内生産数を減らしては、国内の雇用が減る。それは日本経済に悪い影響が出るし、日産の労働組合の問題となる。
1999年にルノーが日産を買収して、カルロス・ゴーン氏の経営で業績を回復した現在、ルノー・日産・三菱の三社連合は、三菱自動車を含めたことで、VWおよびトヨタと同等の生産台数を誇るようになり、2017年は世界No.1となった。しかし、利益率ではトヨタに遠く及ばず、三社連合の効果を出していかねばならない時期でもある。
ゴーン氏も64歳。差し迫った問題として、ゴーン氏と現在の経営陣が去ったあと、三社連合が解消されないように体制を作らねばならない。ルノーは日産自動車の株式の43%を持ち、日産自動車はルノーの株式15%を持って、株の持ち合いで提携関係を保っている。現状、ルノーが日産の経営権を握っているのは43%の株式とカルロス・ゴーン氏の経営手腕により確かだが、不可逆的にするには経営統合が良い。それは、日産が25%のルノー株を持つと、ルノーの持ち株の議決権を、日本の会社法により無効にできるからだ。
日産にとって業績が回復している現在、フランス国内に仕事を取られるのでは、ルノーと提携している必要がなくなってしまう。フランス政府は、持ち株15%を、フロランジュ法の「2年以上株を保有していると議決権が2倍になる」ことにより、影響力を行使したいとしているのだ。
今年6月、ルノーのCEOに再任される条件として、フランス政府はカルロス・ゴーン氏に三社の経営統合を求めたとみられている。さて、こうして経営権争いになったとき、「自社のビジネスモデルの都合を無視」して、マネーゲームとなってしまうのは世の常だ。三社連合で世界No.1の生産台数と言っても、利益率は現場の生産体制などにより、大きく揺れる。TNGAを着々と推し進めるトヨタに対して、三社の重複した生産体制、業務体制では効率が悪いことが、容易に推察できる。
変革の激しい時期だが、それはEV・AI・IoTなど技術的発展のスピードが速いことによるのだ。その時、政治的思惑で経営権争いになると、改革がおろそかになるだろう。特に、三社の生産体制のなか「商品統合と、部品をモジュール単位で共通化」していくとなると、世界の工場の生産設備を含めた体制整備は容易ではない。それは技術的問題よりも、運営上の問題が経営体制を政治の思惑で乱されてしまうからだ。この状況でカルロス・ゴーン氏の経営手法では、より系列の整理に結び付いてしまう。メガ・サプライヤーの利用が増えるのは必定だからだ。
これまでカルロス・ゴーン氏のカリスマ性に頼り、体制整備が十分に進んでこなかったツケと、マクロン大統領の思惑が、どの様な結末をもたらすのか、興味は尽きない。物言う株主が「マクロン大統領」となっているようだ。日産の労働組合が蚊帳の外であると、社員はまたまた放り出されることになる。労働組合が、経営権争いに参画できる戦略が必要だ。
【仏マクロン大統領・カルロスゴーン・日本政府の三角関係】ではなく、【仏マクロン大統領・カルロスゴーン・日本政府・日産労組の四角関係】に持ち込むには、組合によるかなりの荒業と政治力が必要だ。残念だが、現在の連合など組合側にそれほどの力はあるまい。まずは、日本政府と日産労組の共闘関係を築かねばなるまい。意外に思うかもしれないが、「ゴーン氏と労組」の共闘が有効と見える。打つ手のない系列会社、つまり「下請けとははかない」ものだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)