トヨタ車販売店に豊田章男社長など経営陣が乗り出す! 系列一本化で危機感

2018年4月8日 17:11

■トヨタが販売チャネル(系列)を地域別に見直し?

 トヨタが販売戦略を見直しているようである。今年初めには、全国の販社をこれまでの4つのチャネルから7つの地域に分け直し、トヨタ本社の経営陣、豊田章男社長と6人の副社長の7名が、地域ごとにそれぞれ援護する体制を取ると発表していた。また4月2日、来年4月には東京の直営販売会社4社(トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店)を統合すると発表。販売系列ごとに違う車種を販売することをなんとか維持していたトヨタも、東京から系列一本化の動きに入ったようだ。東京では、すべての車種を購入することができるよう店舗も作るようだ。

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 自動車ディーラー(販売店)を取り巻く環境は変化してきており、若者の車離れ、高齢化などで国内の年間自動車販売数は最高で777万台であったものが500万台を下回ってきている。また、カーシェアリング、配車サービスなど新規の自動車関連事業のサービス利用者数が増加している今、販売や整備・車検と従来の販売体制の自動車ディーラーは岐路に立たされていると言ってもいいかもしれない。

■営業方針の半世紀の変化

 太平洋戦争から20年たったころから日本のモータリゼーションは始まり、車の営業は「ルートセールス」を基本として始まった。バブル経済盛んな頃になると、セールスとサービス窓口分離など「カウンターセールス」へ変化が起きた。それは、購入から納車まで3カ月を要するなど「殿様商売」が可能となってきた経済情勢の中、セールスはセールス活動に特化、それも「カウンターセールス」に徹するほうが効率的となってきたからだった。

 バブル経済崩壊後に情勢は一変し、1980年代後半に記録した777万台の国内販売高の記録から500万台をきる国内市場の縮小により、各社とも「ルートセールス」に回帰する動きもあったが、複数の全国チャネルを統一する動きが加速している。市場縮小に対応する合併の動きと同じ経費節減だが、トヨタは国内4チャネルを維持してきた。しかし、変化には販社の体制そのものを変える必要性を示している。

■IoT導入によりディーラーに求められる変化

 数十年先だが、IoTが本格的に社会全体に導入され始めると、顧客はネットを通じて注文し、定期整備や車検を必要としない整備体制となることが予測される。整備は車に取り付けられたセンサーにより整備の必要となった部分だけを、必要になったときだけ整備をすることになり、定期整備、車検の必要性がなくなってくる。

 ディーラーの役割も、販売拠点と整備拠点の両方が縮小することとなる。現在、定期整備や車検のため「利権商売」のようになっている販社だが、そうした存在の必要性が激減し、その存在そのものが危ぶまれることになる。30年後の販社の存在が問われる事態なのだ。

 一方で、最近の営業マンは「一本釣り営業」と言ってよいようなコミッションセールスをまねた営業方針をとる人が増えた。それは、カウンターセールスでは成り立たなくなる市場縮小の中で、「市場拡大の方策」ではなく「販売成績だけ」をノルマとして課す経営スタイルとなって、販売現場が独自に変化してきた結果と見える。結果、自動車セールスの姿としては長期的に見ればマイナスになるのだが、現場ではノルマだけの管理を受けているので「知恵足らず」に終わり、長期的には「さらに市場の縮小」を招く結果となってしまっている。

■「どこで切っても金太郎飴」の実践

 トヨタとしては、IoT、AI、EVの拡大により、急速に進む「自動車商売」の変化を受けて、これからの生き残りをかけた「販社再構築」、あるいは「販売方策再構築」に乗り出さねばならない状況であろう。これは日産をはじめ国内各社が取り組まなければならないことだが、「従来のコストダウン」を考えた販社統合では済まない改革の必要性が迫っている。

 豊田章男社長以下6名の副社長、総出で改革を推進する体制は、トヨタの並々ならぬ危機感の表れと見るべきであろう。トヨタは原点に戻り、「どこで切っても金太郎飴」を実践して、「第4次産業革命」を乗り切ろうとしている。それは日本企業、日本経済の浮沈をかけた、大事業であるのだろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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