掃除機のダイソン、新電池でEV潜行開発 英政府が支援 最初の発売は日本市場か
2018年3月27日 11:34
ダイソンのEV開発参入についての情報は、事の始まりはイギリス政府の助成金プログラムの資料で、当時ダイソンが秘密にしていたEV開発を誤って記載してしまったことによる。2016年3月、研究開発資金約20億円をダイソンに助成しているイギリス政府が商品名を「新しい電池を用いたEVの開発」と書いてしまったのだ。
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ダイソンはバッテリー式の掃除機開発において、「全固体電池」を開発していたようだ。それから1年半、ダイソンは正式にEV開発参入を表明していた。2020年までに市場に投入することを目指して、これまで400名の技術者が関わってきていたという。そして2018年3月20日「日本が最初の発売国になる可能性がある」と発表したのだった。
■EVは本当にガソリン車よりも造りやすいのであろうか?
EVは以前から、「これまでの自動車メーカーでなくとも開発できる」と言われてきた。それは「エンジン、ミッションといった設計も加工も難しい部品がないからだ」と考えられているからだ。本当だろうか?
確かにエンジン、ミッションはたくさんのノウハウが必要で、技術の塊だ。これらを省いてしまうと重要保安部品も「足回り・ステアリング系統」などに限定される。「開発製造は容易い」と言えるのだ。
現在、自動車部品サプライヤーは、モーター、バッテリーをはじめAI関連の部品の開発が進み、世界の自動車メーカーに売れる体制を整えてきた。自動運転、IoT関連の部品も、「システムセット」でメガサプライヤーが開発している。この状態なら「部品さえ仕入れれば、EVは造れる」と考える人が多く出てもおかしくはない。
しかし、テスラを見ると、「製造はできるが量産が出来ない」。どうしたことだろう。電子制御のシステム開発では最先端を行き、サービスカーによる整備体制も可能であることを示している。しかし、テスラは量産でつまずき、量産品で品質保証が出来るのであろうか?
■車は動く物体
「車の事故はAI導入で少なくなる」と見られている。しかし、なくなることは考えにくい。つまり「品質保証」が問題なのだ。現在の自動車メーカーは、長年にわたり安全性を確保するため「品質管理」に取り組んできた。それでも、少し気を抜くと事故に繋がりかねない問題を起こすことになる。日本政府も、自動車事故による年間死者1万人をこえるレベルから、4千人レベルまで減らすことに成功している。それでも半世紀以上の時間を要している。しかもアメリカ同時多発テロ事件の死者をはるかに超える犠牲者を、毎年出し続けているのだ。
どれほど自動車事故を無くすことが難しいことであるのかを知れば、EVと言えども「品質管理」の行き届いた「製造技術」を持つことの難しさが知れる。たやすいことではないのだ。それでもEVはこれまでの「自動車産業の企業」でなくとも作ることが出来るかもしれない。逆に、現在の自動車はどれほど「品質保証」の技術の優れているのかを知るべきなのだ。
直接作業者ばかりでなく、社員全員が「よいクルマをつくろうよ」と気持ちを合わせねば出来ないことなのだ。中国の現在の国家としての「気持ち」のレベルでは、日本人では到底見逃せない危険のレベルであるのだ。
しかし、EV開発中のダイソンは製造技術にも優れているはずだ。バッテリーの研究でも先行しているはずだが、全固体電池などは、ダイソンだけでなく開発が進んでいる。このような中でニッサンが決断したように、バッテリー・サプライヤーが最先端の部品として各社に供給することを前提とするようになった。つまり、EVメーカー間で、同じサプライヤーから購入する限り、開発がある程度進むとバッテリーの優劣がなくなる情勢なのだ。2020年以降、世界はEVの競争が激しく展開されていくはずだが、ニッサン以外の日本メーカーも必死で参入してくると、テスラ、ダイソン、グーグルなど新規参入組も苦戦することになろう。
個人的見解であるが、多少の技術的先行では、現在の世界のサプライヤー体制においては、どのメーカーも商品力で大きな差を生むことは難しく、結局は「商売」のうまいものが勝ち残るであろう。そして、世界では自動車産業が突出した知識集約産業とはならず、次第に産業としての重要性を落としていくように感じる。つまり家電のようになっていくのであろう。残る知識集約産業の航空・宇宙産業は、自動運転の時代になってもエンジンが残り、軍事産業の影響も強く、しばらくは重要産業との位置づけは変わらないであろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)