世界の自動車生産を変えた「トヨタ生産方式」のビックリする数字とは何か?(上)

2018年3月15日 08:11

■「トヨタ生産方式」を、あえて「リーン生産方式」と表記

 1990年に、日本の自動車メーカーが欧米のメーカーを追い抜く日が来ると衝撃を与えた1冊がある。それが、マサチューセッツ工科大学のウォマック氏らが書いた著書『リーン生産方式が世界の自動車生産を変える―最強の日本車メーカーを欧米が追い越す日』(参考: 購買管理 - 東京大学)である。彼らはトヨタ生産システムを研究・調査し、「トヨタ生産方式」ではなく「リーン生産方式」と名前を変えて欧米に紹介した。整理・体系化してパッケージ化されているのだが、別名としたのは、おそらくはアメリカのプライドが許さなかったからだろう。

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 その書籍の中で、注目すべき資料がある。「地域別にみた部品供給会社の比較」として、例えば「金型変更時間」「作業員1人当たり機械数」「在庫レベル」「欠陥部品数」など調査した数字が出ている。比較は、日本(18社)・米国にある日本(8社)・米国(10社)・欧州(18社)においてである。これによって、トヨタ生産方式がいかに「効率的」か?が一目瞭然である。

■「プレス金型変更段取り時間」がすべてを表す

 まず「金型変更時間」であるが、これは自動車ボディのプレスにおいて金型の交換にかかる時間と思われる。日本は7.9分、米国は114.3分、欧州は123.7分。プレス機の金型交換においては日本では約8分、欧米ではほぼ2時間かかっていることがわかる。単純計算で8倍の時間である。これは、ロット生産が欧米で続いていて、資金効率に大差があることを示している。進歩の差が30年分ほどもあると見るべきだが、ロット生産とトヨタ生産方式の違いを理解することが難しいという背景もある。

 「作業員1人当たり機械数」であるが、これは工作機械を1人の作業員が何台受け持っているかであると思われる。日本は7.4台、米国は2.5台、欧州は2.7台。作業員がいかにムダな時間を過ごしていないかを表しており、日本は約3倍の効率となる。これはトランスファーマシン(自働化)の効果であり、「工程結合」の進歩状況の違いを示していることになる。工程が結合されると中間在庫は消滅するのは物理的道理であり、「段取り替え」が短時間であると「多種少量生産」が出来ることとなる。それが「プレス金型変更段取り時間」の極端なまでの短縮の動きなのだ。

 この「プレス金型変更段取り時間」が、自動車産業での「多種少量生産」に変更できている証となる。日本企業の7.9分と、欧米企業の2時間を見れば、欧米企業が1990年ごろでは「多種少量生産」に移行できていない、確実な証拠となってしまっている。30年ほどトヨタに遅れていることを示している。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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