ホテル建設ラッシュに拭えぬ懸念

2018年2月10日 05:58

 世の中、何事も計算通りにはいかないようである。

【こちらも】相次ぐホテル建設も狙いは一様ではない

 東京・名古屋・大阪・福岡など主要8都市で2020年に照準を合わせた「ホテル」の建設ラッシュが続いている。不動産サービス大手のCBREの調査によると、8都市のホテル客室数は20年末で32万9000室となり16年末に比べ32%増えるという。増加率が最も高いのは京都府で57%増、次いで大阪府の42%増。ちなみに東京都は31%増。東京五輪・パラリンピックに合わせ、準備は着々と進んでいる。

 ところが客室数増という状況下、大阪府でこんな事態が発生しているという。大阪府は昨年1月に東京に次いで「宿泊税」を導入した。宿泊税の枠組みはこんな具合だ。「1泊1万円以上~1万5000円未満の宿泊料で100円」「1万5000円以上~2万円未満で200円」「2万円以上で300円」を府税として徴収するという次第。しかし昨年11月段階の宿泊税収は6億8000万円。府の想定額の7割にとどまってしまったというのである。何故か。大阪府が宿泊税の検討に入ったのは15年。そこに思わぬ落とし穴?があった。

 府内の147のホテル・旅館を対象に14年の宿泊費用の価格帯別宿泊者数を聞き取り、これをもとに価格帯別の割合を出した。そしてそれを観光庁調査の大阪府内の宿泊者数を掛けて税収予想のベースとしたのだ。落とし穴とは14年という年が、中国人による「爆買い」が話題となりホテル不足が指摘されたタイミングである。宿泊単価が高騰していた。だが「爆買い」は中国政府の(規制)施策もあり、この年をピークに漸減傾向となった。一方14年から16年に府内にホテルは50件(客室も約5000室)増えている。需給関係の習いで宿泊単価は下がる。結果、昨年の大阪府の宿泊税収は想定に届かなかったと予想される。

 実は現状のホテルラッシュは、2020年の訪日観光客4000万人を前提に試算しても前記のCBREでは、こんな試算も同時に発表している。「2020年東京は依然、宿泊居室数が3500室不足する。だが京都・大阪では1万室以上が供給過剰になる」。

 ホテルラッシュ、採算面で一抹の不安が残る。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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