依然多い外貨建て保険トラブル
2018年1月23日 17:05
国民生活センターによると「昨年4-11月期は前年同期に比べ3割方減ったが、それでも229件という高水準に変わりはない。相談の多くが高齢者で8割近くを占めている」という。一時払い外貨建て保険の苦情・相談である。
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何故かくも長きにわたって同様のトラブルは起きるのか。外貨建て保険には「年金型」「終身型」がある。顧客から預かった資金を、利回りの高い「米国債」や「豪州債」等で運用する。年金や保険金、解約返戻金は外貨で受け取る。ここまで書けば本紙の読者なら、容易に気づくはずである。資金を預け入れた時期に対し保険金などを受け取るタイミングが「円安」なら換金資金はかさ上げされる。逆に円高になっていれば目減りすることを。つまり外貨建債券は投資商品の色合いが濃いのである。苦情が多い高齢者層は、果たしてその当たりを認識して「投資」したのだろうか。投資は自己責任が大原則である。株式投資に置き換えれば投資顧問会社などが「かくかくしかじかで妙味のある株」と助言しても損を被れば自己責任、と同様である。
苦情の主は高齢者の親族というケースも少なくないという。彼らの持ち込む苦情は「銀行は為替リスクがあることを説明したというが、70歳近い高齢の母がきちんと理解して契約・購入をしたとは思えない」といった類が多いという。
真の非はどちらにあるのかを立証するのは、決して容易ではない。ただ引っかかるのは「苦情者(親近者)」の多くが「銀行で契約・購入した」としている点である。
銀行窓販で保険商品の全面解禁から昨年12月で丸10年になる。外貨建て保険への苦情増加と、軌を一にしている。
周知の通り、銀行は日銀の「異次元金融緩和」にはじまり「ゼロ金利政策」に至って収益確保に四苦八苦している。「銀行カードローン」の急増などその最たる例だが、銀行は「稼ぎ」方の多様化を図っている。利鞘の確保にこそならないが、銀行窓販による手数料稼ぎにも血道を上げている。それが「高水準の外貨建保険への苦情の背景」とするのは、うがちすぎだろうか。
金融庁も「(外貨建保険を)投資商品として説明して販売していないのなら問題だ」とコメントしている。(記事:千葉明・記事一覧を見る)