【スバルの病根を考える】現場からのボトムアップ・システムの必要性
2018年1月17日 05:35
SUBARU(スバル)は2017年12月19日、記者会見を行い、完成検査に関する国土交通省の業務改善指示について、調査報告をしたことを発表した。
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日経テクノロジーは、❝吉永社長は「会社として決めたルールを社員が守れなかった。制度の問題はない。絶対に守りたいというルールを作る」としている❞と伝えている。
これは大変残念な認識だ。取材した記者の「品質管理についての知識・理解力」に問題があったのかもしれないが、社長としてのコメントとなると、SUBARU(スバル)の品質保証は絶望的となる。それは調査報告書に記載された原因・背景についての記述を見ると明確になる。
同じ記事では、❝原因・背景として、調査報告書は「完成検査業務の公益性・重要性に対する自覚の乏しさ」「現場における過度な技量重視の風土」「『補助業務』の便宜主義的な解釈」「ルールの合理性に対する懐疑」「部署間・職階間のコミュニケーション不足」「完成検査業務に対する監査機能の弱さ」などを挙げている❞と伝える。
この原因・背景として上げられた内容を見ると、「組織が管理されていない」ことが明白で、社長以下、経営者・管理者が「組織管理を上からの命令と勘違いしている」ことが根本的病根である。
■企業経営は「ノルマ管理ではない」
近年の企業では「取締役と執行役員を区別する」ことと「取締役は資金運用が仕事」と割り切ってきた。そこで起きてきたことは、「ノルマ」を決めて、達成を迫る管理職の姿だ。残念ながら、ノルマを達成するための手法は作業者任せとなっており、取締役は「現場を知らない」「現場は自分のタスクではない」との認識が強くなっている。「現場は放置」とまではいかないが、実際には管理する者がいない状況に陥るのだ。
「社内ルールを決めれば、社員は守る」と安易に思っている節がある。極めて短絡的理解だ。例えば、役所は厳格なルールがあるが、実際に国民の人権・生活などを守ることが出来ていると言えるだろうか?形骸化していることは他にも多数みられる。
自動車ジャーナリストはいざ知らず、企業経営者が「組織運用」を知らないことは許されまい。SUBARUの社内組織が機能するのは、まだ先のこととなろう。「品質保証」は「マニュアル・命令だけでは出来ない」ことを、社長自らが理解することから始めなければならない。社員一人一人の自発的自覚が必須なのだ。
これは想像以上に困難なことだ。通常は「人を入れ替えねば達成できない」と判断されることだ。しかし、株主たち、あるいは「物言う株主たち」の関心事は「株価と配当」だけだ。SUBARUを再生する力は、外部、特に自動車ジャーナリストの「適切な批判、監視の目」である。
■ボトムアップ・システムの必要性
ユーザーが、SUBARUの商品力の高さも含めて、「品質保証」について適切な理解をしていない現状では、「SUBARUを救う力」はどこにもない。残る希望は、確かに「社員の自覚と誇り」だけだ。それは「現場の社員からのボトムアップ・システム」を作り上げることから始めるべきであることを示している。年老いた「品質管理・組織運用のプロ」からの、非常に「高い商品力」を持つSUBARUの再生を心より願う、せめてものアドバイスだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)