【イーロン・マスク「テスラCEO」(下)】EV化の流れの中で 人となりとテスラの行く末
2018年1月1日 09:51
■創業者の性格の差・「ホンダ宗一郎は人ったらし」
バイク・自動車(製造業)で成功した本田宗一郎の性格で注目すべきは、人の使い方に優れていたことだ。イーロンと同じように無茶を行って社員を困らせてきた。しかし、宗一郎は社員から慕われた。
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ホンダがF1に参戦した当時、誰もがホンダが勝てるなどとは思っていなかった。「走る実験室」と言って、市販車につなげる技術開発のテストの場としていたが、ついに優勝することが出来た。その時、内輪で祝勝会が開かれたのだが、宗一郎夫婦で出席したその席で、彼は下座に降りると、額が床につくほど頭を下げて「ありがとう。私の夢をかなえてくれた」とスタッフにお礼を述べたと言われる。
このように、スタッフの立場を理解し、協力してこそ目標が達成できることを自覚していた本田宗一郎だった。しかし、イーロンは違う。能力が足りないと感じたスタッフは、その夜のうちにクビになっていったと言う。目標を達成していく社員を使っていくのだそうだが、宗一郎のように「感謝」することがない。すると人間は指示された範囲にしか力を発揮しない。かつてのホンダ社員は、自由に活動し宗一郎を上回る仕事をしてきた。しかし、イーロンの使い方では、社員はイーロンの能力を上回ることはできない。なぜなら、イーロンの能力を上回っていれば、クビになってしまうからだ。
ワンマン(独裁者)が注意すべきなのは、自分が気付かなければ、必要な物事でも“ない”ことになってしまうことだ。イーロンに溶接技術の重要性が分るとは思えない。彼にとっては、社員が当然に出来るレベルのことだからだ。彼自身が作業する技術の範疇に入ってはいないのであろう。
自動車産業の「範囲の広さ」と「奥の深さ」は、ソフト産業の比ではない。ソフト開発は、自動車製造では重要な一部門でしかない。強引な旗振りだけでは、どうにもならないことだ。「完成後修復が90%の車両で起きている」のに、それを放置してきたイーロンの認識では到達していない部分だ。これは製造の専門家の指示を仰がねば、解決しない。
金融・ソフトの専門家は、どうしても物事の理解が平面的になりがちのようで、それらの専門家である経営陣では「品質保証」が保てないようだ。「最先端の経営技術」と言われてきた、最近のカルロス・ゴーン日産自動車会長の動向をよく見てみるのが良かろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)