安倍首相による賃上げ企業への新優遇税制に麻生財務相はどう出るのか
2017年10月30日 16:57
安倍首相は、「企業に3%程度の賃上げを実現させるため、来年度の税制改正で法人税減税を検討していく方針」と報じられている。あの手この手で「賃金上昇->消費活性化->脱デフレ」を図っていこうというわけだが、企業の「内部留保取り崩し->賃金上昇->消費活性化->脱デフレ」論を機に触れ折に触れて強調している、麻生財務相はこの報道を耳にして安倍首相にどう応じるのだろうか。興味深い。
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何故なら財務省は目下、来年の税制改正に向け「既に実施された賃上げ分を法人税額から控除できる制度の拡充」を軸に検討を進めているからである。財務省としては「税収は極力減らさない」が基本方針だからである。財務省の親玉は麻生氏。さて、どう動くか。
そもそも「賃上げ」に関して、時の為政者が「(口先)介入する」こと自体、どうだろうか。「青臭いことを言うな」と笑う声が聞こえそうだ。がそもそも株式会社というのは誰のものなのか。日本の場合は「従業員のもの」とする歴史的認識が強い。だから「(賃上げせよという)為政者の介入」も、聞き流されている。だが欧米ではこの考え方は、まず受け入れられない。欧米の常識は「会社は株主のもの」だからである。従って、内部留保についても「取崩し->配当増」が、当然の仕儀となる。この当たりは見方が交錯するところだろうが、確かに日本企業の内部留保は2017年3月末時点で約406兆円であり、「過大」の指摘がなされるのは分からないでもない。
「内部留保はあくまで会計上の概念。相当額の現金が余っているわけではない。実際に企業が貯め込んで現預金は200兆円余り」とする専門家の見方を耳にしても「貯め込み過ぎではないか」という思いを完全に払拭するには至らない。
では何故、日本企業はそこまでの金を貯め込むのか。ある内需型企業の経営者は、こう説いた。
「我々日本の企業の大方が、日本経済が持続的に拡大するとは考えていない点が最大の要因だろう。だから積極的な設備投資が進んでいない。M&A戦略の展開でグローバル化図ろうという企業は限定的。結果、先々に備えて貯えに回すことになる。幸か不幸か株主の圧力も弱いので」
為政者の介入に晒される構造に自らを追いやり安住してしまっているのなら、残念である。(記事:千葉明・記事一覧を見る)