【ホンダ・N-BOXからBMW750まで進む軽量化】神戸製鋼、北米でハイテン生産設備を増強
2017年9月30日 16:32
神戸製鋼は、自動車用高張力鋼板(ハイテン)の需要拡大に備え、北米で大型投資を決めた。投資額は4億ドル(約440億円)。米鉄鋼大手のUSスチールとの合弁企業であるプロテックコーティング(オハイオ州)の拠点に、連続溶融亜鉛めっき設備を1基増設する。これで、錆止め効果のある亜鉛めっきされたハイテンの生産能力が上がる。営業運転開始は2019年7月の予定だ。
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■車の軽量化に必須のハイテン
地球温暖化が進む中、自動車のCO2排出を抑制するために、世界では燃費規制が厳しくなっていく。燃費を改善するためには、自動車の軽量化が必要である。そこで、ハイテン(高張力鋼板)をはじめ、カーボン、アルミなどの軽量素材を使用することが重要になってくるのだ。
世界の自動車製造企業では、軽量化のため、アメリカはアルミニウムをボンネットなど力の加わらない部位に使用する技術が進んでいいる。EUではドイツメーカーを中心としてカーボンを使用することが増えてきた。日本はハイテンを使用することが多くなり、成果を出し始めている。
これはそれぞれの国の得意分野と言えるのだが、日本の得意なハイテンは価格が安いとのメリットがある。さらに日本はカーボンでも先進の技術があり、B787などでは胴体の一部丸ごとカーボンで造る技術などを持っている。またドイツは、BMWi8、i3などで胴体の大部分にカーボンを使ったり、BMW750などでは補強材に多く使ってきている。カーボンの補強材より日本のホットスタンプ材のほうが価格的に安いため、小型車まで使用が進み始めている。
そんな中でハイテンの使用は世界で広がる可能性があり、今回、神戸製鋼が日本の優秀なハイテン技術を持ってアメリカで生産拡大することは、大きな意義があろう。
【参考】【BMW7シリーズ(3)】A Iの最先端、しかし・! 軽量化の基本、軽量素材とは?(知恵の輪サイト)
ハイテンは、鉄に炭素の他、ニッケルやシリコン、マンガンなどの元素を添加して熱処理をすることによりできる鋼板である。鉄の3倍ほどの強度があるため、同じ強度を保つのに薄型化することができるので、軽量化が実現できる。
また、今回神戸製鋼が増産するハイテンは、780Mpa(メガパスカル)以上の超ハイテンである。この数字は鋼板の引っ張り強さのことで、数字が多くなるほど強度は高いのだが、割れやすくなり加工はしにくくなる。強度の強い超ハイテンはフレームの中でも乗員を守るため、バンパービームやドアビームなど「潰さない部位」に使われると思われる。熱処理や冷却方法の工夫により加工のしにくさも克服しているようだ。
世界第2位の自動車市場である北米でも、CAFÉ(企業平均燃費)規制の強化のため、当然軽量化は加速化するとみられている。それと共に、車重の20%ほどを占めるフレームに使用されているハイテンの需要も高まるため、使用率も高くなっていくだろう。そこで今回、神戸製鋼とUSスチールはラインの増設を決定したようである。
神戸製鋼は、国内3位の鉄鋼メーカーであるが、国内の粗鋼生産ベースのシェアでは1位新日鉄住金、2位JFEスチールに大きく水をあけられている。しかし、高品質ハイテンの生産技術では先を行っているという自負があり、超ハイテンの国内シェアも3~4割ある。世界でも需要が見込まれる中、ハイテンのさらなる増産により追い風にしたいのであろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)