トヨタ、世界の潮流に乗る・G's(ジーズ)廃止GRに統合 スポーツマインド前面に
2017年9月20日 19:57
トヨタが新しく発表した「GR」ブランドは、大雑把に受け止めるならニッサン・ニスモ、BMW・Mシリーズ、ベンツ・AMGなど、レーシング活動のノウハウをつぎ込んだスポーツバージョンであると考えられる。
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トヨタの社内カンパニー「GAZOO Racing Company」が24時間耐久レース・世界ラリー選手権など、レーシング活動を担ってきた。G's(ジーズ)と呼ばれ、これまでもスポーツバージョンを受け持ってきたが、ブランドを統一して浸透させることを狙っている。
「GR」ブランド体系としてはエンジンチューニングも含めた「GRMN」、スポーツモデルの「GR」、スポーツマインドを気軽に取り入れた「GR SPART」となっている。カスタマイズパーツ「GR PARTS」も用意されている。
また「TOYOTA GAZOO Racing」の拠点となる「GR Garage」を立ち上げる。それに伴い「AREA86」は来年3月までに閉鎖。統一を図る。
■トヨタ生産方式の理想は「生涯囲い込み」
GAZOO(ガズー)の当初の狙いとは違ってきたのだが、ガズーレーシングが豊田章男社長就任と共に浮上してきて、現在の世界的流れに乗ったようだ。日本での販売政策を考えるうえで、これは大きな転換と言えるのかもしれない。
GAZOOは、トヨタ生産方式の概念では、トヨタの販売戦略の上で顧客の「生涯囲い込み」戦略の方策であろうと考えていたのだ。しかし、現在販売現場では「一本釣り商法」の傾向が強まり、「ルート営業」の流れを絶やすまいとするトヨタメーカー、販売店などの思惑とは別に、流れは「カウンターセールス・コミッションセールス的手法」に傾いていっている。
かつてはルートセールスの体質が濃いのが車のセールスであったが、バブル経済の折りに、「セールスと整備」で「顧客との窓口」を分けることから始まり、カウンターセールの傾向が強まった。顧客の方も、ウィンドウショッピングに近い感覚になりつつある。そのため現在所有の車のメーカーにこだわることなく、自由に選択している。
これには、車の信頼性が大きく上がり、機械的な知識がなくとも、ディーラーの整備に任せることで車を自由に乗ることが出来るようになったことが関係し、大きく情勢を変えていると考えられる。車は本来、動くメカニズムであり、故障は危険を伴い生活に支障が出る可能性が高かったため、顧客も専門的技術を知っている必要があった。しかし、現在の車は故障せず、メンテナンスに特に知識がなくても危険に会うことはめったになくなった。
それが家電並みに手軽に選んでいける状態が作られ、ボディカラーが重要な選択肢となってきているのがその証拠である。本来、選択する要素としてボディカラーは、実用物を決めるには優先順位が低いものである。機能が優先すべきであるが、カラーが優先してきたのは顧客にとって装飾品としての認識に近づいている証拠である。
■トヨタ社員一同、車談義をしよう!
その流れの中で、ディーラーの営業マンの知識レベルも低下し、「一本釣り商法」と変わらぬ知識レベルで対処できる客層がほとんどとなっているようである。だが、今回の「GRブランド」を浸透させるには、顧客の自動車に対する関心を上げる必要があり、「メカニズム」についての知識は必須となってくるはずである。しかし、現在のディーラー社員レベル、トヨタ本社の「お客様相談窓口」レベルでは、ほとんど素人であり、「GRブランド」の理解も進まない程度であろう。
「GRガレージ」を展開するには、そうしたメーカー販社の技術レベルの極端な低下を立て直すのが必須条件となってしまうだろう。本来、「GR」を購入する顧客程度の知識であれば、エンジンチューニングまでしているのだから、ディーラーの営業マンが突っ込んだ「車談義」を顧客と出来なければならないレベルである。
「お客様相談窓口」に至っては、技術的相談には全く役に立たないばかりか「苦情相談窓口」の備えばかりで、技術相談対応がお粗末なばかりに、営業の邪魔をしている始末になっている。メーカーの顧客窓口がこのレベルに落ちてしまっているので、まず本社社員、販売店社員の技術レベルの回復が必要であろう。「TNGA」についても説明できる社員はどれくらいいるのだろうか。
トヨタの最も得意とするハイブリッド・システムを概念だけでも説明できるディーラー整備士もいないのが現状だ。「よいクルマをつくろう」の前に「車を好きになろう」と叫ぶべきであろう。「車好きの社員を募集しよう」と人事に指導すべきではないだろうか?社員を車好きに出来ないのであれば、「車好き」の顧客を掘り起こすこともできないのは当たり前であろう。
豊田章男社長には、「GR」ブランドを成功させ、車の市場を掘り起こすためには、自社社員の技術レベルを上げることから始めるべきだと言わせてもらう。「車好きな顧客」を捉えるのなら、ディーラーの社員が「車談義」が出来ることが必須である。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)