【ホンダジェット・生産が軌道に乗る】ミツビシ・MRJ、日本の翼を取り戻せ!
2017年8月28日 11:25
ホンダジェットは順調に販売数を伸ばし、出荷台数(小型機)世界一の座を達成した。さすがに自動車生産メーカーと言えるのかもしれない。それに比較してミツビシ・MRJのもたつきが指摘されている。しかし、これは比較すべきでない。比較するなら三菱・MU-2にすべきだ。
【こちらも】ホンダジェットが世界一の快挙達成 その魅力は?
ホンダジェットは順調そのものだが、まだ油断すべきでない。メンテナンスの問題があり、結果はこれからだ。それでも本田宗一郎の気概がこもった事業達成は称賛したい。まさにホンダイズムだ。
参考: 【ホンダ・ジェット出荷数で世界一】MRJはボーイングから国産機を取り戻す戦い(1)~(2)(知恵の輪サイト)
■ボーイング727、ダグラスDC-9などに敗れたYS-11
それに比較するとミツビシ・MRJはもたついている。確かに幾度となく納入が遅れて、ライバルとの差がなくなるどころか、追い抜かれてしまう。
私はかつての国産旅客機YS-11の生産終了時期に日本航空機製造にいた。事務作業のコンピュータ化が始まったころで、半官半民(政府が50%出資、国内大手重工業5社が50%出資)の国策会社だった。戦後失われた日本の航空機産業を復活させようと始まったのだった。しかし、その開発は困難であり「時代遅れ」にされてしまった歴史でもある。
世界の短距離幹線路線を狙ってターボプロップのYS-11が生産され始めたとき、世界は純ターボジェットの時代にさしかかっていた。ボーイング727、ダグラスDC-9、ホーカー・シドレー トライデントなどリアジェットの形式を確立した時期の航空機だった。
YS-11の開発が始まったとき、純ターボジェットは短距離では採算が取れないとされていた。そこでターボジェットの前にプロペラを付け、推力のほとんどをプロペラの推力で賄うターボプロップを選んだのだ。しかし、ボーイングは違った。上昇力と下降力を強力にして、水平飛行の距離を稼ぎ、座席数をYS-11の最大64席から120席余りとして、採算性を上げてきたのだった。燃費の悪いターボジェットだったが、推力は強く上昇力に優れて、何よりスピードが速かった。下降に関してはファウラーフラップ、前縁スロットなど最新の空力技術を使って、飛行に対して沈下率を上げて対処してきた。
YS-11は飛ばずして、主要幹線から追い出されてしまった。戦前の軍用機などを設計していた技師を集めたのだが、主任設計士は戦前の世界一周飛行の「航研機」の設計者で、現在の鳥人間コンテストにつながる「人力機」で有名な「木村秀正」元日大教授だった。ゼロ戦の堀越二郎元防衛大学教授と共に知られた設計者だった。
■Y-X計画をボーイングに身売りした日本政府
勝敗は明らかだった。世界の航空会社はB727、DC-9などを購入し、世界は一気にジェット時代に突入していった。YS-11は営業に成功できず180機で生産は打ち切られた。それは仕方がない。MRに失敗し、技術的に後れを取ったのだった。しかし、許せないのは、その当時掲げていたY-X計画、Y-XX計画をボーイングに身売りしたことだ。
当時、既にY-X事業団が出来ており、次期国産旅客機は設計が始まっていた。我々もY-X事業団に移行するはずだった。それが政治の世界で中止になり、皆、ボーイング社の出向となった。そしてB757、B767となって羽ばたいたのだった。
ボーイングは日本の国家予算が出るY-X計画の事業費を、そのままB757の開発に取り込み、民間旅客機のリスクを分散させたかったのだ。日本が政治的判断で、いやグラマン・ロッキード事件は明るみに出たが、ボーイングは、まんまと日本の国家予算を手にしたのだった。
Y-Xの設計者たちは、SEであった私の部屋の隣で毎日暇を持て余していた。
フランスとドイツの国策会社エアバス社も、宿敵ボーイング社だけにヨーロッパの空を取らせるのではなく、EU独自の旅客機を持ち続けるためにできた会社だった。そのため当初は赤字続きでも、政府の方針で造り続け、ついに、ボーイング社と世界を2分するだけに成長した。
■エアバスは1日にしてならず
MRJは三菱重工のメンツをかけた仕事だ。しかしそれだけではなく、日本のメンツと将来の知識集約型産業として、死守してほしい機体なのだ。軍用機では国産のF-1の後継機であるF-2開発で、アメリカの干渉をまた許し、F-16改とも言うべきF-2になってしまった。日本には既にF-15Jの後継機を開発する能力があるはずなのに、F-35を買わされてしまった。いつまでアメリカの占領地に甘んじるのであろうか?
ステルス技術でも日本は遅れてはいない。F-3は独自開発をしてほしいものだ。
ロケットでも一時アメリカのロケットを使わされてしまったが、断固として国産を主張することで、現在のH2ロケットは堂々たる人工衛星打ち上げ国産ロケットだ。
MRJはボーイングから国産の翼を取り戻す戦いなのだ。なんとしても成功させ、次の機体の開発に掛かってほしい。次はB787のライバル機だ。B787でも国産の技術が7割と言われているのだ。かならず出来る。そして近い将来、エアバス・ボーイング・ミツビシと世界三大旅客機メーカになってほしいものだ。それは中国の台頭してくる中で、知識集約型産業を持つことは日本経済のためでもあるのだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)