木を有効活用する時代(上)
2017年8月21日 11:47
コンクリートジャングルから木のジャングルへ。そんな時代がやってくる。そう予感させられたのは、現政権が成長戦略の一環として打ち出した『(檜や杉など)国産木材を使ったCLT工法による建造物の普及』であり「変なホテル/第2期棟」である。来訪者へのサービスの一切合財を担うハウステンボスの宿泊施設である変なホテル第2期棟目は、CLT工法を駆使して鹿島と木質注文住宅最大手の住友林業のタッグによって昨年3月に建てられた。見た目は、完全な木造ホテル。
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CLTとは厚みのある製材を木目が直交(クロス)ように重ね、接着剤で張り合わせた板(直交集成板)。変なホテル第2期棟の床・壁・梁など躯体の殆どが九州産の木材により造られている。木材はRC(鉄筋コンクリート)に比べ「強度・耐震性」はほとんど変化がないが、「断熱性で優れ、熱伝導率は12倍強」。そして同規模の木質系建屋はRC構造体に比べ工期が圧倒的に短い。変なホテル第1期棟(43室)に対し2期棟目(72室)は、約2カ月短い工期で完成している。だが、現状で木材がRCに比べ劣るとされるのは「耐火性」。
木質化建造物の先進国は欧州。1990年代以降に(木質系の)3~5階建てビル・マンションが増え始め、現在では9~10階建ての高層ビル・マンションも少なくない。昨春にはケンブリッジ大学を中心としたチームが高さ300m、80階建ての木造ビル建設構想を打ち出している。専門家筋の話を総合すると、「技術的には日本でも木造の中高層建屋の建築は可能。木質系にはRC系に比べコスト面での優位性や再利用面などの利点が多々ある。今後、住友林業など木質系建屋の開発に積極的な企業や機関で木質耐火性・防音性で欧米並み基準に近づけるための研究・開発作業が進んで行けば、課題は着実にクリアされていくはず」と期待をする声が強い。
そして実は木質系建屋の拡充は、日本の森林の自然体系を守り「環境整備」を進めるという側面に対する貢献度も大きい。(記事:千葉明・記事一覧を見る)