日本的経営は時代遅れなのか
2017年8月18日 11:46
IoTを企業経営にどう取り込んでいくかが、雌雄を分ける。異論はない。だがそのことと「日本的経営の時代は終わった」とする見方は、全く別物と考える。
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かつてミサワホームの創業者社長だった三澤千代治氏は、「土日週休2日制」が日本でも当たり前の時代になる中で、自社にも週休2日制を敷きながらも「本来給与は江戸時代の禄高と同じ。主家に事あればいつ何時でも駆け参じるのが当然」とし、自らの名刺を含め営業関係者の名刺には「当社の住宅にいつ何時不具合が生じても対応できるように」と自宅の電話番号を刷り込ませていた。「土曜日は、自宅で普段は時間をかけて考えられない事をじっくりと考える日」と言い切った。いまの時代なら「査察」は免れまい。それを「日本的経営」というつもりはサラサラない。だが「日本のビジネスマンはYESorNOが明確でない。曖昧」とする論が高まった時、故松下幸之助翁が発した「日本は神様も仏様もキリスト様も受け入れている。それぞれの催事に分け隔てなく溶け込んでいる。それが日本人、強いては日本社会の強さだ」には、妙に頷かされた。
システムキッチンで知られるクリナップは、故井上登氏が東京都荒川区西日暮里で興した卓袱台の製販業が祖業(井上食卓)。井上氏自らが卓袱台を背負い通称:かっぱ橋界隈を売り歩いた。井上氏は「世話になった」を基軸に物を考える経営者だった。故郷である福島県いわき市にはいまでも同社の主力工場があるが、工場にはお社が設けられ在職中に死去した元社員が祀られている。いわき市では広範囲な介護関連事業が展開されている。本社新築時には都区内の一等地が不動産会社から多く持ち込まれた。だが西日暮里を動こうとはしなかった。
いずれも根底には「お世話になった人・場所への感謝」があった。企業に収益の波はつきもの。厳しい時期も何回となく潜り抜けた。賞与減額もしばしば余儀なくされた。そんな時に同社では故井上氏時代以来「減額後の役員賞与」を組合に公にし、「世話になりたい」とトップが頭を下げてきた。
日本的経営にも、学ぶべき点は少なくないと思う。(記事:千葉明・記事一覧を見る)