【マツダ・SKYACTIV-X・新エンジンEVを駆逐するか?】SPCCIで燃費3割改善
2017年8月11日 17:01
自動車の技術についてメーカーが独自のネーミングをするので、なじみが薄くかえって分りにくくなっている。「スカイアクティブ・テクノロジー」とマツダはいうが、初めて聞いたとき「空を飛ぶ技術」と解釈して??戸惑ったものだ。
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しかし「マツダ・SKYACTIV-X」SPCCI(火花点火制御圧縮着火)は決して忘れない名前となろう。内燃機関にとって大きな前進だ。ロータリーエンジンの時と同じように、非常に困難な技術をよく実用化にこぎつけたものだ。
■内燃機関、つまりエンジン改良に取り組んできたマツダ、EVを駆逐するか?
これまでマツダは「クリーンディーゼル・エンジン」で燃費規制をクリアしてきた。欧州の各メーカーの行き方に沿っていた。しかし、ここにきてEUとイギリスは「2040年以降ガソリンエンジン車の販売を禁止する」と発表して、各社一気にEV移行が検討されている。
しかし、EVは本来、再生可能エネルギーによる発電でなければ社会が成り立たないシステムだ。石炭火力発電に頼っている国が、EV移行を進めているが、電力事情も良くない中、EVが本格的に普及すれば電力事情が悪化し、さらに火力発電を増大しなければならないことに追い込まれる可能性も懸念される。
そんな発電方法がカイゼンしないと、「マツダ・SKYACTIV-X」はガソリンエンジンの熱効率を大幅にカイゼンして、EVの流れを逆転するかもしれない。
■集中発電・配電よりも個別発電が社会全体では効率的か?
大規模発電所で発電して、高圧線で広域に配電するよりは、個別に内燃機関(エンジン)で発電したほうがロスが少なく、結局のところCo2排出量が少なくなる可能性がある。再生可能エネルギーの発電が安定しないため、火力発電所を維持しなければならないことを加味すると、EVは「Co2排出量減にはならない」との結論になる可能性が高いかもしれない。
再生可能エネルギー発電に変換している、ドイツの電力料金の高騰を考えると、「失敗」との懸念が広がっている。エンジンによる個別の発電の優位性が出てくる中で、マツダは各国の事情を加味して、それぞれに合った車を提供しようとしている。「燃料採掘から、車の製造・走行・廃棄」まで、全ての段階でのCo2排出を加味して、トヨタと組んでEV・PHV・FCV・HVからSKYACTIV-Xまで提供できる備えを考える「マツダ、トヨタ」が正解であろう。
■SKYACTIV-X・新エンジンのSPCCI(火花点火制御圧縮着火)って、なに?
簡単に言えば、「ディーゼルエンジンの熱効率の良さ」と「ガソリンエンジンの高出力」を合わせたものとなる。それを【SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition)「火花点火制御圧縮着火」】とマツダは名付けた。
ディーゼルエンジンは、HCCI(予混合圧縮着火)「燃料と空気が圧縮されて高熱となって自然発火する」システムだ。ガソリンエンジンはそれでは「ノッキング」を起こしてしまうので、SI(火花点火)「燃料と空気を混ぜて圧縮して、ある程度高温になったところで、スパークプラグで火花を飛ばして点火して燃焼させる」システムだ。
当然、ディーゼルエンジンのほうが高圧縮に出来て、薄い燃料混合でも燃焼して燃費が良くなり、低回転ではトルクが強くなる。
「理想空燃費=14.7(燃料1gに対して空気14.7g)」に対してマツダのSKYACTIV-X・エンジンのHCCI(予混合圧縮着火)では空燃比36.8:1と発表されている。薄くすれば薄いだけ燃費が良くなるので、これは薄い。火花点火(ガソリンエンジン方式)でない圧縮着火(ディーゼルエンジン方式)の優位性が明らかだ。この圧縮着火が全域で出来れば良いのだが、それが高負荷領域で空気量が不足して、うまくできないようだ。
それをマツダは、「高応答エアー供給機」で解決しているのだが、詳細は発表されていない。電動の過給機であろうか? すると48V電源が必要となるのかもしれない。ともかくも高負荷領域ではスパークプラグが活躍する。
■ガソリンエンジンでディーゼルエンジンのように圧縮自然着火を利用
リーン(希薄)燃焼で、燃費が良いのを出来るだけ全回転域で行えるようにして、出来ない領域は火花点火で燃焼させているようだ。圧縮着火(ディーゼルエンジン方式)の良いところは、あらかじめ燃料と空気を混合した状態にしていると、燃焼室全体で一気に燃え始めるところだ。ガソリンエンジンのスパークプラグによる点火(火花点火)では、プラグの火花から燃え広がるので、爆発が燃焼室全体に広がるのに時間がかかる。そのため爆発力が小さくなりトルクが下がる。
マツダの新エンジンは、火花点火を極力避けて圧縮着火として、トルクも増大し、反応の良いエンジンとしたのだ。マツダのSPCCI(火花点火制御圧縮着火)は全域で10%、ピークで30%のトルク上昇で、燃費は20~30%の向上が見込めるようだ。ディーゼルエンジン並みの熱効率となるようだ。
■マツダは全方位の体制を取った
トヨタとマツダの資本提携が発表されており、トヨタとマツダはEV・FCV(水素燃料電池)・PHV・HV・SKYACTIV-Xなど、どのような方向に社会が動いても対応できる体制を取り始めている。それは単に製品開発だけではなく、トヨタTNGA、マツダ・スカイアクティブ・テクノロジーとも、生産技術の面でも、全世界で全方位の体制造りが進んでいる。生産方式の概念の一致は、両社の大きなメリットだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)