【えっ!メーカーがレストア!】マツダ・初代ロードスター、レストア事業開始
2017年8月8日 07:11
メーカーが正式にレストアサービスを行うのは、聞いたことがない。部品供給などはしていたのだろうが、オリジナル部品の再販売など、マツダにとって初めてのことであろう。
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■初代ロードスターの魅力とは?
「NA ROADSTER RESTORE」と「NA」と名乗ったことについて少し解説してみよう。ファンにとっては無用のことと思うが、少しでもファンを増やすため、また自動運転になっていく車の陰に隠れてしまいそうな「ライトウエイト・スポーツ」の魅力を分ってもらうためにも、書いてみよう。マツダ・初代(NA)ロードスターは「ライトウエイト・スポーツ」の正当な継承車と言えるからだ。
マツダの言う「NA]とは初代の型式を指している。一般的言葉としては、「NA」はNormal Aspiration(ノーマル アスピレーション)「自然吸気」の意味だが、現在は熱効率優先のためアトキンソンサイクルなどの採用でNAエンジンでも高回転型エンジンは少なくなった。
参考: 【ハイブリッド・エンジン(5)】アトキンソンサイクル・エンジン
「ライトウエイト・スポーツ」と言っても2つの要素がなければ楽しさは半減だ。1つはパワーウエイトレシオが「軽量」であること、それが大パワーエンジンで実現しているのではなく、車重そのものが軽いことで実現されているのが条件だ。もう一つは「高回転型エンジン」が必要だ。それ以外にもホイールベースが短いことなどが必要条件としてある。だが「軽い」ことと「高回転型エンジン」であることは必須だ。それに伴ってクロスレシオ・ミッションであることはもちろんだ。
「NA」初代とマツダが限定したのは「反応が良いエンジン」との条件でもあり、ターボラグは致命傷であろうか?
■スポーツカーとGTとの区別
スポーツカーとGTを混同する傾向が強まっている。フェラーリ各車をスポーツカーと呼ぶことがあるがライトウエイト・スポーツとは言わない。フェラーリなどは、むしろGTと呼ぶべきだ。
GTとは英語でグランドツーリング(grand touring)つまり直訳すれば大旅行。イタリア語でグランツーリスモ(gran turismo)が「GT」が語源だが、イタリア語を英語に訳したと言うべきであろう。長距離を快適に高速で移動することで、ミラノとナポリを結ぶ速度150km制限のアウトストラーダ・デル・ソーレ(Autostrada del Sole「太陽の高速道路」)俗に「太陽道路」を高速で飛ばすためにフェラーリが生まれた。
一方で「ライトウエイト・スポーツ」とは、イギリスの貴族がロールスロースを所有し、バンデンプラスプリンセスを日常に用いて、休日にはロータス7、MGなどの「ライトウエイトスポーツ」でワインディングを「かっ飛ばす」ことを楽しんでいた。2座席オープンカーが基本で、馬車のように幌がついていたが、休日には、ガレージに着脱式のハードトップが残されているのがイギリスらしい風景だ。
これが「ソフトトップ(幌)」に対する「ハードトップ」の語源で、後にハードトップはスタイリングの一つとして定着してくる。日本では「ハイオーナーカーのシンボル」とされたが、後に安全性の点で廃止されていく。
現在のベンツSLなどに残るスタイリングで、安全のために座席背面にロールバーが、転倒の際には立ち上がってくる。
■純粋なライトウエイトスポーツは少なくなっている
安全性などから少なくなってしまった「ライトウエイト・スポーツカー」が日本で残されているのは奇妙ではある。ホンダ2000、S660、マツダロードスターなどだが、ダウンサイジング・ターボエンジンの普及で、高回転型エンジンは殆ど現存しない。
高回転型エンジンで、ワインディングを早く走り抜けようとすると、回転数を高く保たねばならない。回転を落としてしまうと立ち上がりの加速が遅れてしまうからだ。そこでクロスレシオ・ミッションが必要になり、ギアチェンジを頻繁に繰り返して、いつでも立ち上がれる準備をしておくことが、操縦の腕前となる。
CVT、DCTなどでなら、いつでも最適のエンジン回転を選べるが、MTでは運転者自身の腕前で大差がつくこととなる。F1パイロットのセナは「セナ足」と呼ばれたアクセルワークでプロストなどのライバルよりも、サーキット1周で平均300回転ほど高回転で回していたと言われ、それが誰よりも速い証明でもあった。10年ほどの活動期間で、ポールポジションの回数がダントツに多いことが証明している。ホンダF1チームメカニックは、「セナ足」をコンピュータが「雑音」と判断してしまうのを防ぐのに苦労したそうだ。天才ならではの逸話だ。
マツダ・初代ロードスターはNAであり、イギリス伝統のライトウエイト・スポーツを引き継いでいる。レストア事業で、それを残してくれるのはうれしいことだが、新型車も発売してくれることを望みたい。AI付きではなくね。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る)