楽観的過ぎる兜町 年末相場への期待には雲か

2017年8月4日 10:33

 兜町の住人は「年末にかけ2万円台以降・地固め相場が出現」と口を揃える。その理由はいかにも楽観的に過ぎる。

 円安基調が続く、が最大の理由。確かに「緩やかな」という但し書き付きながら、FRBのイエレン議長は「金利引き上げ・金融緩和縮小」といわゆる「出口論」を宣言している。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁然り。「秋には緩和縮小の議論を」と公言。カナダは既に7月12日、6年8カ月ぶりに利上げに転じた。対して日銀の黒田東彦総裁は「緩和継続」に止まっている。「円安基調」は一見、説得力を持つかのように思える。

 だが欧米各国は「性急な金融引き締め」はできない。何故なら先進国が金融政策を「引き締め」に舵を切ったのは、2008年のリーマンショックが契機。日米欧中が以降市場に供給した資金(ベースマネー)は日本円にして約1130兆円。これが主要国及び成長途上国への貸し付けに回り、掛け算的に増幅し現在の世界のマネーサプライ(通貨供給量)は1京170兆円。こうした状況下で欧米の金利高が進んだら、どうなるか。世界に拡散している過剰マネーが欧米に還流し、金融市場の混乱は必至。

 中国、然り。現状のマネーサプライは07年末比、4・2倍に膨張。民間債務はGDP比約2倍。日本のバブル期末期と同じ状況。習近平体制下で秋の5年に1度の党大会に向けさらなる投資が実現されれば、IMFが「世界経済の下振れリスク」と指摘するまでもなく「バブル崩壊」必定だろう。

 景況動向に目を転じれば、ユーロ圏の7月の景況感指数は10年ぶりの高水準。しかし米国の景気指標は斑模様も、4-6月のGDP速報値は前期比年率で2・6%上昇も年度目標3%かつ市場予想2・7%を下回る状況。「1-6月の自動車販売が8年ぶりに前年同期を下回った点を象徴的に、リーマンショック後9年越しの景気拡大が曲がり角を迎えた。ユーロ高➡ドル安➡円高」とする論に頷かされる。

 年末相場への期待には、大きな雲がかかっている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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