問題解決の極意その6 〜おかしいと思ったらその場で『何故?』と問う〜

2017年6月8日 11:41

 メーカーの工場、チェーンストアの店舗、営業拠点等色々な現場がありますが、当り前のことが出来ていない現場がたくさんあります。その原因は現場管理者が言葉による問題の顕在化を出来ていないからです。

【前回は】問題解決の極意その5 〜問題解決の勝負の分かれ目は?〜

●当り前のことが出来ない工場現場

 整理・整頓・清掃等当り前のことが出来ないと悩んでいる食品工場を訪問しました。そのメーカーでは経費節減を推進しており、この工場にも掲示板、事務所、トラックヤード、生産ラインの通路、倉庫等至る所に経費施減のポスターが貼ってあります。工場長の経費節減への意気込みが伝わってきます。

 この工場のトイレに入り、便座に座ると眼の前のドアにも経費施減のポスターが貼ってありました。しかし、ちょっと変です。訪問した日は8月の暑い盛りなのに便座が熱いのです。眼の前には経費施減のポスター、便座は8月なのに熱い。『なんだ、これは?』と思いました。

 このトイレは工場事務所の近くで、工場長や現場管理者も使用しているはずです。夏なのにトイレの便座が熱いことに、工場長達が気付かないことは決してないはずです。

 私は工場長へ言いました。「経費削減しているのに、トイレの便座が熱いですけど!」。「あっ」と工場長は悔しそうな声をもらし、「気が付いていたのですが・・・」と言い訳が始まりました。

●言葉による問題の顕在化

 工場、店舗の現場ではこんな当り前のことが出来ず、単純な問題が放置され続けていることをよく見かけます。現場管理者は分かっていたのに、第三者に指摘されると悔しくてたまらない問題です。

 このような当り前のことが出来ず、放置されているのは何故でしょうか?その原因は工場長、現場責任者自身にあります。

 工場長達はこの当り前のことが出来ていない問題を認識は出来ています。しかし、現場でその問題を顕在化出来ていないのです。人間は気付いた問題をその場で言葉にしないと、その記憶が薄れ、忘れてしまうものです。その問題が当り前のことであれば、尚更その傾向が強いのです。このような記憶を脳科学では短期記憶と言い、眼から入った問題情報はすぐさま脳から消えていく運命にあるのです。

 従って、問題を顕在化するために工場長達は『おかしい』、『変だ』と思ったことはその場で、即座に「何故?」と言葉にして質問し、問題を問題として認識していることを公言しなくてはなりません。

●終わりに

 工場長達が「何故?」の言葉を事あるごとに発する効用は他にもあります。言われたことをやるのが自分の仕事と思っていたメンバーが、現場で『おかしい』、『変だ』と思ったことを言葉にすることも自分の仕事と思ってもらえるようになります。言葉による問題の顕在化は問題解決を促します。(記事:KMAきむらマーケティング&マネジメント研究所 木村博・記事一覧を見る

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