夜明け前の合法民泊に大手資本が用意着々

2017年5月26日 08:30

 5月中旬に観光庁は「(2017年の)訪日外国人観光客が、過去最速で1,000万人を突破」と発表した。これを受ける形で、みずほ総研はこう試算した。「2020年の訪日客数が4,000万人に達する(これまで観光庁の計画では2,000万人だった)と仮定した場合、東京や大阪を中心に13都道府県で宿泊施設4万4,000室が不足する」。

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 周知の通り閣議決定を経た「住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)」が国会に上程された。関係筋の話を総合すると「審議が順調に進めば、早ければ来年1月にも新法は施行される」という。

 こうした動きが相まって俄かに急発進したのが、大手資本による「合法民泊」への対応である。例えば京王電鉄が従来の特区制度を活用し2月22日に民泊対応型マンションを開業した。そればかりではない。総額約200億円を投じ18年の京都の対応型「京王プレリアホテル」に続き、翌年夏には札幌市にも出店することを明らかにした。

 鉄道資本の積極姿勢が目を引く。背景には人口減少に伴う乗降客数減=売り上げ減がある。それを回避する施策が、沿線中心の対応型ホテル建設というわけである。例えば、西武ホールディングス。傘下のプリンスホテルの客室単価約1万5000円に対し、1万円前後に抑えた特化型ホテルを19年度に展開を始めるほか今後10年間に新ブランドを含め100カ所の開業を宣言した。また冨田哲郎社長自らが今月上旬にJR東日本の、こんな計画を明らかにした。「今月下旬にも秋葉原駅の隣接地に196室の『ホテルメッツ秋葉原(仮称)』を着工する。43箇所で展開中の『メトロポリタンホテルズ』『ホテルメッツ』を20年には60箇所にする。20年ごろまでには1万室を超えるホテルチェーンを目指す」。

 ウィークリー(マンスリー)マンション業界大手も着目している。東京で約400カ所のマンスリーマンションを管理するレジデンス東京は「マンスリー契約に空白が生じた場合の副次的なもの」(野坂浩司社長)としながらも、2月末に民泊新法案に準じた「レジデンストーキョー大森西」をオープンした。マンスリーマンションを介して得た外国人対応のノウハウを活かしての「満を持しての参入」とする見方が強い。

 頭金ゼロでのアパート・マンション経営で知られるシノケングループ(ジャスダック市場)では、ならではの参入を先行して果たした。宿泊施設である民泊には、一般の火災保険は適応されない。テナントなどが入る事業用保険の加入が必要。しかし民泊を展開しようとする個人(ホスト)には高い負担となる。そこで着目したのが民泊民宿協会の保険サービスや三井住友海上と提携しているジェイピーモバルの補償サービス。これを「民泊保険」に衣替えしたのである。

 爆買いこそなりを潜めたが、外国人観光客増は既存大手資本にビジネスチャンスを提供し始めている。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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