見つめ合った2人は、まばたきや脳の活動が同期することを明らかに―生理学研究所・定藤規弘氏ら
2015年11月26日 17:20
生理学研究所(NIPS)の定藤規弘教授らの研究グループは、二者がみつめあい、お互いに注意を向け合っている状態では、瞬きを含む目の動きが二者間で同期するだけでなく、脳の特定部位の活動が同期することを明らかにした。
二者がみつめあい、お互いに視覚的注意を向け合っている状態を「注意共有」と言う。注意共有は、乳児から成人へ成長する過程で、視線や指差しを駆使して「自分が注目している物事」に他者からの注意を得られるよう働きかける動作(=共同注意)などといった、さまざまなコミュニケーション行動に必須な準備段階であると考えられている。
今回の研究では、二者間でみつめあいをおこなっている最中の脳活動を、二人同時に記録可能な機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を用いて計測した。実験では、初対面の実験参加者がペアになり、1日目は、みつめあいによって注意共有状態にある二人の脳活動と瞬きの状態を記録し、その後参加者ペアは、共同注意課題(みつめあいによる注意共有状態の中で、お互いに視線を使って同じものに注意を向けるという課題)を約50分間おこなった。
さらに2日目は1日目と同じペアに対し、1日目と同様にみつめあいによる注意共有状態の脳活動と行動を計測し、さらに追加実験として、互いのリアルタイムの表情ではなく、事前に撮影しておいた顔映像をみつめてもらった際の脳活動と行動の記録もおこなった。
その結果、1日目の注意共有状態の行動指標として、ペアになった二者間の瞬きの同期の度合いを調べたところ、2人の瞬きに特に有意な同期は起きなかったが、脳活動では、大脳皮質の右中側頭回で、同期した活動を示した。
そして2日目のみつめあい課題では、2人の瞬きに有意な同期が認められ、さらに脳活動では、1日目の実験で有意な活動の同期がみられた大脳皮質の右中側頭回以外に、右下前頭回(弁蓋部)や腹側運動前野といったさらに広い範囲で、2人の脳活動に同期が認められた。
定藤教授は「コミュニケーションの礎である注意共有は、瞬きという無意識的に発生する行動を介して二者を繋ぐ働きがあり、二者間の脳活動の状態を同期させる働きがあることが明らかになりました。みつめあいによる注意共有は、脳活動のパターンを同一にすることで、その後のコミュニケーションを円滑に開始する働きがあるのかもしれません」とコメントしている。
今後は、今後注意共有のメカニズムをさらに明らかにしていくことによって、教育現場でより効果の高い情報伝達手法(学習方法)の開発したり、コミュニケーション全般を不得手とするさまざまな疾患に対する新たな行動療法の開発などにもつながることが期待されるという。
なお、この内容は「Neuroimage」に掲載された。論文タイトルは、「Neural substrates of shared attention as a social memory: A hyperscanning functional magnetic resonance imaging study」。
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