ここがポイント-会社を伸ばす中小企業の採用戦略:第10回:採用面接での留意点(2)

2011年10月19日 15:32

 前回に引き続き、採用面接での注意点などをお伝えしたいと思います。

■好き嫌いはあって当たり前-感性も重要な判断材料
 面接経験が少ない人に面接官を任せようとすると、「きちんと判断する自信がない・・・」などと言う人がいます。この「きちんと」には、多くの場合で理性的、論理的という意味を含んでいます。応募者に対して真面目に誠実に向き合おうという姿勢ですから、それについてはとても好ましく思いますが、果たして理性的、論理的に判断することが良いことなのでしょうか。

 採用活動をよく恋愛や縁談に例えてきましたが、もし結婚を前提としたお見合いであれば、必ずしも理性やロジックだけでなく、相手から受ける感覚やフィーリングによって判断するところも多いはずです。採用面接では、それよりは論理的に理由を説明できるようにする必要はありますし、常に理性的、ロジカルに判断できるならばそれに越したことは無いでしょうが、やはりお見合いですから、言葉では説明しづらい“何となく”感じた印象や雰囲気に、共感したり違和感を持ったりすることはあるでしょう。最終的には個々の主観的な好き嫌いもあると思います。

 私の場合、経験の少ない面接官には「無理して理屈をつける必要はなく、感覚的な事でかまわない。最後は好き嫌いでも良い」と伝えていました。

 人の好き嫌いは誰でもあって当たり前と思いますが、これを大っぴらに、なおかつ面接のような公式の場でのことを言うのは、さすがに抵抗感を持つ人が多いでしょう。

 しかし好き嫌いにも、そう感じる何らかの理由があります。過去からの経験、自分の価値観、相手の雰囲気や発言・態度に対する感じ方など、要素は様々です。言葉では説明できなくても、無意識のうちに自分との相性を感じ取っています。社員個人の相性であっても、何人分も積み重なれば会社との相性につながります。5人の面接官のうち3人が「あまり好きになれない」と言ったとしたら、やっぱり応募者と会社の相性には溝があるはずです。

 感情も多くの人のものを積み上げればロジックになります。応募者に対して理性的に向き合うことは心構えとして大切ですが、あまり理屈に捉われ過ぎるのは、判断を狂わせることがあります。面接においては感性、フィーリングで感じ取ることも、とても大切だと思います。

■「厳しさ」と「威圧」は違う-威圧に効無し
 最近は少なくなりましたが、わざと意地悪、または威圧的な質問や反論をして、これに対する対応を評価する“圧迫面接”という手法があります。目的はストレス耐性を図る、感情的にならずに冷静な対応ができるか、臨機応変な振る舞いができるかを見る、その他いろいろ言われます。

 応募者が多い業界では、今でもふるいにかける面接、落とす面接として“圧迫面接”を実施しているところもあるようですが、近年では圧迫面接は、「パワハラの一種」「人格否定」ともなりかねず、またインターネットの普及で悪い噂はすぐに広まるようになり、会社の評判を落とすだけなので慎むべきとの評価が一般的になっています。

 こういうお話をしても、中には「実際のビジネスの場面はそんなに甘くない」と、なかなか納得して頂けない方もいらっしゃいますし、経営者や人事担当者の考え方によって、自覚がないまま“圧迫面接”になっていることもあります。

 ここで注意していただきたいのは「厳しさ」と「威圧」は違うということです。

 例えば相手の感情を逆撫でしたり、態度で圧したりということは「威圧」といえ、俗にいう“圧迫面接”はこちらに入ってくると思います。一方で、「言動と行動の矛盾を突く」「つじつまが合わない点を指摘して確認する」「うわべの発言を深掘りする」というような質問は「厳しさ」であり、これは面接の場面では必要な事です。「厳しさ」と「威圧」の違いは、応募者と会社が対等な関係を維持できているか、応募者にとって非礼、無礼との印象を与えていないかどうかということが境目になります。厳しい質問はするべきだが、威圧する必要はないと思います。

 もちろん仕事の上では、相手から罵倒されるような言動を受けることもあるでしょうが、それを面接の場面で、しかも一方的に試すことに意味があるでしょうか?

 何より採用面接はお見合いの場です。普通はお見合い相手にいかに気に入ってもらうかを考えるはず。相手の神経を逆撫でするような馬鹿な真似はしないですよね・・・。

■次ページ 面接の雰囲気作り-フレンドリーなら本音が出るのか?

■面接の雰囲気作り-フレンドリーなら本音が出るのか?
 最近は面接の雰囲気づくりに気を配る会社が増えました。できるだけ本音を引き出そうとの意図で、リラックスしたフレンドリーな雰囲気で面接を行う会社も多いように思います。年齢や境遇が似た人を面接官にしたり、話題や言葉遣いを気にしたり、皆さんいろいろな工夫をしています。

 面接にはほとんどの応募者が高い緊張状態で臨みます。多くの面接官の方は、できるだけフレンドリーな接し方をして、緊張を解きほぐそうと努めているのではないかと思います。このような気づかいはとても良いことですし、しっかり話を聞き出すためにも必要な事です。

 ただし気をつけなければならないのは、フレンドリーに接してリラックスムードを演出しても、必ずしも本音を引き出せるわけではないということです。中にはさらに身構えて本音を見せまいとする人もいます。

 私が以前経験したことですが、見るからに緊張度の高い応募者がいらっしゃり、こちらはリラックスさせようといろいろな接し方をしたのですが、どんな接し方をしても緊張状態は変わらず、結果ギリギリの判断で次の面接に進んでもらったということがありました。

 次はさらに緊張する雰囲気の役員との面接・・・。どうなることかと心配して見ていたら、信じられないほどの落ち着いた雰囲気で、的確な対応をしていました。後で聞くと、緊張が高い方が逆に開き直って落ち着けるのだそうで、そんなものかと感心したことがあります。

 さらに別の例ですが、大きなサークルのリーダーをされていて、大勢の人前で話す経験も豊富な人だったので、人と話すことは慣れているだろうとの先入観でいたところ、お会いすると緊張感でうまく話せないほどの様子。聞くと大人数は人の顔が見えないから何百人いても平気だが、人の顔を見ながら話すのはすごく緊張するとのことで、そんな感じ方もあるのかと印象に残っています。

 このように、応募者の本音を引き出すということでは、一辺倒のアプローチでなく、いろいろな雰囲気を用意することが必要です。面接場所(会議室or応接室、社内or社外など)、会場の雰囲気(面接官との距離、テーブルの有無や配置)、面接官の顔ぶれや人数(一般社員or偉い人、一人or複数など)、その他いろいろな形で場の雰囲気を変え、その反応を見る事が必要です。

 いろいろな場面設定を工夫して、その中での応募者の様子を観察すると、意外な発見や出会いがあるかもしれません。

 次回は、内定出しを行う場面での注意点や意識について、お伝えしようと思います。

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