ここがポイント-会社を伸ばす中小企業の採用戦略:第7回 採用選考プロセスの組み立て方(1)

2011年7月25日 15:00

 今回は、採用活動にあたっての選考プロセスの組み立て方について、考慮しておきたいポイントをお伝えします。

■面接回数をどうするか
 面接回数を考えるとき、原則は組織階層に応じての設定になります、中小企業の場合は、多くても計3回程度でしょう。この回数自体に明確なセオリーはありませんが、注意が必要な点は以下の二つです。

(1)選考期間を考えて、そのスケジュールとの兼ね合いを考慮すること
 新卒採用はポテンシャル採用ですので、じっくり判断したいとの意向から、2ヶ月、3ヶ月という長い選考期間になる場合があり、説明会など初めの接触から通算すると、さらに長期のこともあります。入社時期は決まっていますから、タイムリミットが迫っていない限り対応は可能でしょう。

 これが中途採用の場合は、少し事情が異なります。離職中の方もいますし、内定から入社までの期間は概ね短く、タイムリミットは近いことが多くなります。選考期間は1~1ヶ月半程度というところが一般的だろうと思います。

 この選考期間を考慮せずに、単純に「面接は3回」などと決めてしまうと、3ヶ月で3回はあまりにも間隔が空きすぎてしまいますし、1ヶ月間で3回はスケジュールがタイトになり、意外と大変です。

 このような場合の対応として、前者のように長い選考期間であれば、面接回数を増やしたり、間に何らかの企画を挟んだりという事が必要でしょう。例えば選考とは直結しない社員との懇談、職場見学、パネルディスカッションや質問会といった形での情報提供などが考えられます。

 後者のように短期間に選考しなければならないのであれば、判定精度を保つ工夫が必要で、一回の面接に対応する面接官を増やす、面接時間を多めに取る、些細な連絡等も含めて接点を増やし、付属情報を集める努力をする、などということが必要になってきます。

(2)同じようなシチュエーションで何度も面接しないこと
 応対できる人員が少ない中小企業ではやむを得ない場合も多いのですが、何度も面接に呼び出して、毎回同じような話を聞くというケースがあります。面接官の顔ぶれまでほとんど同じということもあります。

 よくあるのが課長、部長、社長と順番にそれぞれ別日程で面接をするが、面接で他の人がどんな雰囲気でどんなやり取りをしているのかを知らず、情報共有もイマイチ足りずに、結果として同じことを何度もやるようになってしまっている場合です。

 会社にとっては、時間をかけて慎重に、最終決済者の社長が判断する材料集めということでしょうが、応募者の立場からすると「同じことを聞くのは情報共有や連携がされていないのではないか」「コミュニケーションが良くない風土ではないか」「何事にも判断が遅いのではないだろうか」など、マイナスの印象を与えます。選考を通じて志望度を下げてしまう恐れもあります。

 それならば、例えば全員が一堂に会して面接した方が、面接官がお互い気づかない点をカバーし合えるし、時間の上でも効率的ですし、結果的に応募者の印象も良いはずです。不足があれば、また別の場を設定することも可能でしょう。

 きちんとステップを踏んで採用活動を進めることは大事ですが、あまり杓子定規に考えると弊害も出てきます。面接は単に回数を重ねて時間をかければ、判定精度が高まるという事ではありません。自分たちの都合だけにとらわれず、応募者の心情なども考慮をしながら、自社なりのプロセスを考えていくと良いと思います。

 ある会社では、すべての面接を社長と担当役員の方が二人で行うのですが、固い雰囲気の面接の後には、食事しながらざっくばらんに話せる場を作ったり、面接場所を会議室、応接室、社長室と変えてみたり、面接官に年の近い社員や境遇の似た社員、予定配属先の上司など毎回ゲストを混ぜたりして、場所や話題や雰囲気を変えることで応募者に毎回新鮮な印象を与え、面接対応の評判が良い会社があります。マンパワーを割かない上でのちょっとした工夫ですが、選考過程を通じて応募者の志望度を上げることができています。工夫次第で良い対応はできると思います。

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■集団面接、グループディスカッションの功罪
 採用選考の中で、集団面接やグループディスカッションを導入している会社が増えています。その実施目的は、「集団の中での振る舞いが見たい」という判断材料のバリエーションを増やしたい部分と、「応募者をふるいにかけたい」という採用活動効率の部分の二点が大きなものです。

 しかし実際にやって見ると、なかなか難しいのが本音ではないでしょうか。これはグループのメンバー構成や場の雰囲気といった偶然の環境に人の言動や行動が左右され、本質的な判断がしにくい点にあります。判断基準がブレやすいのです。ですから実施にあたっては、選考過程の初期段階に、明らかに採用基準から外れている人の足切りのために行うことが多いと思います。

 この難しさは、選考を受ける応募者の立場からはさらに強く感じることです。面接結果の善し悪しというのは、ただでさえ実感しにくいことですが、集団面接やグループディスカッションの場合、選考する側の判断基準がブレやすいですから、そう感じる度合いは一層大きくなります。そんな中で不採用になれば、クエスチョンマークがいっぱいです。応募者にとっては、とても納得しにくい選考方法であるといえます。

 選考方法が納得しづらいという事は、この対処を誤ると会社の敵を作ってしまうことになります。採用活動は広報宣伝活動でもあるとお話ししましたが、その目的からすると、これは絶対避けなければならない事です。

 一つの方法として、私は集団面接やグループディスカッションの終了時に、その時のやり取りの内容についてのフィードバックをすることをお勧めしています。それぞれの人の良かった点、不足していた点、アドバイスを面接官の方からコメントしてあげるのです。もちろん選考結果のネタばらしにならないように、話し方には注意する必要があります。ただうまくコメントすれば、応募者はそれを聞くことで、会社がどんなところに注目していたのかがある程度わかり、結果を受け入れやすい心理になります。また後につながる反省材料を得られることで、結果が良くても悪くても、それを前向きにとらえることもできるようになります。

 私がお手伝いしたある会社では、最終面接で不採用となった人への通知に、面接で感じた強み、弱みをフィードバックする手紙を添えているところがあります。せっかく応募してくれた方に、最後の最後で断るのは申し訳ないから、せめて今後の自信につながるように、との思いからです。

 会社として、採用基準に達しなければ採用はできません。そんな人でも採用活動を通じて会社のファンになってくれれば、これは最高の広報宣伝活動です。そう思ってもらえるような心づかいは、常に持っておく必要があると思います。

 次回も引き続き、採用選考プロセスの組み立て方の注意点について、お伝えしようと思います。

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