~ここがポイント-会社を伸ばす中小企業の採用戦略~:第4回 採用計画を考える上でのポイント(2)
2011年5月6日 10:29
前回に引き続き、採用計画の際に、考慮しておきたいポイントのご紹介です(前回コラム)。
■新卒と中途では認識を分ける-スケジュールと採用数
中小企業の場合、中途採用を中心とした活動を行っている場合が多いと思います。これは欠員、増員、新規事業など、直近の必要性に応じて人材を求めることが多いためだと思います。
ここ最近は、新卒の就職難のためか、「良い人材が取れるなら」「働く場を少しでも提供してあげたい」などと、小さいながらも新卒採用に初めて取り組んでみようという会社や、しばらく見送っていたが再開してみようという会社のお話を時々聞くようになりました。
このような動きは歓迎すべきことですが、新卒採用の経験があまりない中小企業では、具体的な採用活動の進め方について、中途採用と同じようなやり方で、少し安易に考えているところがあります。
基本的に中途採用は、直近の必要性に応じての採用ですから、活動は短期間に集中して行い、内定後はあまり期間を置かずにすぐ入社ということがほとんどでしょう。
これに対して新卒採用は、次年度入社に向けての活動なので、採用活動を始めてから内定まで、また内定から入社までは、それぞれある程度の期間があります。
採用活動では説明会、筆記テスト、数次の面接とステップを踏み、時間をかけて見極めを行いますし、内定期間中は電話やメール交換をしたり、懇親会をしたり、入社前研修をしたりと、お互いが理解しあうための交際期間のような位置づけになります。(こちらはあまり手をかけないという会社もありますが、私は入社後の定着を左右する重要な期間だと捉えています。)
会社によっては夏頃から、翌々年の4月採用の活動を始めますから、採用活動期間、内定者期間を合わせて1年7~8か月というような長い時間がかかります。
ここからいえば、中途採用は「スポット」での活動、新卒採用は「流れ」で考える活動ということになります。同じ採用活動ですが、捉え方ははっきりと分ける必要があります。
すでに新卒採用に取り組まれている企業ではごく当たり前のことかもしれませんが、これから取り組もうという企業は、あらためて以下の点に配慮した上で行っていただくとよいと思います。
・新卒採用の活動スケジュールは、いつごろ内定出しをするかを考え、そこから逆算して計画する。(エントリー開始から内定までの1クールは2~3か月程度が一般的)
・内定から入社までの期間が長く、一度内定すれば相応の責任が発生するので、受け入れ可能な採用人数を慎重に設定する。
・収益につながるまで早くて3年。長い目でとらえることができる採用数と研修体制を準備する。(放置して見て覚えろでは新人は育たない)
■数の採用?質の採用?-採用基準の話
もう10年近く前になりますが、ある大学の就職懇親会でお会いした他社の採用担当の方が、「うちの会社は質に妥協しない厳選採用だ」と私に力説していたことがありました。当時はまだ採用数ばかりを重視しているような会社もありましたから、たぶんそういう会社との違いを言いたかったのだと思いますが、私がその時思ったのは「なんだかんだ言っても、質のとらえ方は会社によってまちまち」ということでした。
どんな会社でも一定の採用基準はあり、そこに達しない人はほぼ間違いなく採用しないはずです。よく「数の採用」「質の採用」といいますが、特に最近では採用する「数」を優先することは、ほぼ間違いなく無いでしょう。また、その「質」がどんな会社でも共通かと言えば、まったくそうではありません。あくまで自社にとっての「質」であり、それが学歴の場合も、学んだことや職務経験の専門性の場合も、性格の場合も、その他人生経験の場合も、千差万別だろうと思います。結局は自分たちなりの基準で、「質」を見極めて選んでいるという事です。
ここでお勧めしたいのは、自社なりの「質」(採用基準ともいえるでしょう)をどんな形でもよいので、できるだけ多くの社員で共有しておくことです。
中小企業の場合、経営者の持っている価値観や感覚だったり、一部の人による"あうんの呼吸"だったり、ある程度の基準は共有されているが、明示まではされていないことが多いはずです。できればこれを言葉にして、明らかにしておくとよいと思います。社長が心の中で思っているのと、言葉にして明示するのとでは、周りの意識は全く変わります。
質を共有する、明示するなどというと、何か大変な作業に感じてしまいますが、それほど大げさなことではなく、自分たちが注目している人物像のポイントを、いくつか箇条書きにする程度でかまいません。中身は「明るい人」「元気な人」「協調性がある人」など、初めは抽象的でも良いと思います。抽象的であっても言葉で示すと、そのニュアンスに見合った捉え方が徐々にできてきます。
周知は文書でも、簡単な打ち合わせで確認しあうだけでも良いでしょう。
ある会社で「チームワーク」と言い続けたところ、それが社員暗黙の基準となり、基準に見合った社員の採用につながるだけでなく、会社説明を通じて同じ志向の応募者が増え、社員も常にチームワークを意識するようになり、いつの間にかチーム成果を志向するような仕事の仕方に変わっていきました。
こんな副次的効果につながることもありますので、是非やってみて下さい。
次回は、会社説明会など自社理解を進めてもらうためのポイントをお伝えしようと思います。