英語の公用語化を超えて:進むガラパゴス化
2011年5月2日 17:35
■大小100隻以上のタンカー、貨物船、はしけが・・・
この原稿を、今シンガポールで書いています。欧州系の製薬会社さんのアジア・パシフィックのオペレーション課題のワークショップを2日間仕切るために来ました(※編注:本記事は4月27日に執筆されたものです)。
この連載の初回は、英語を公用語ということにして恥ずかしがる社員を少しでもバックアップすることがよいのではないかという意見を書きました(第1回コラムへ)。
そして2回目は、英語の上手下手じゃなくて、要は何がイイタイコトかである、ということを伝えようとしました(第2回コラムへ)。
3回目の今回は、今までの英語シリーズの一応の結論として「だってそうでもしないと、更においていかれるだけなんだってば!」という、やや感情論も入っているお話をしたいと思います。
そのためになぜ船が大事かというと、結局分かりやすい経済指標なんですね。
今日夕方5時位にシンガポールの玄関口、チャンギ空港に着きました。シンガポールの港からマーライオンや、最近できたカジノがある超高級ホテル、マリーナサンズを左にして着陸体制に入ります。
高度を下げて目にするのは、船、船、そしてまた船。かなりのラッシュです。そして、やや沖合には順番待ちの大型船の群れ・・・。
最後にシンガポールに来たのは去年の秋だから半年ぶりですが、全く衰えていません。船の数を見れば大体分かります。
■英語と中国語で「シンガポールへの不動産投資」の小冊子が・・・
そしてお客さん指定のオーチャードロードのホテルにチェックイン。部屋の机の上には「Guide to Investing in Singapore Real Estate」という英語の小冊子。そして全く同じ小冊子の中国語版。なぜか机の上のウェルカム文書は英語と中国語でした。日本語は無し。いやー、これにはちょっと驚きました。今まで泊った時にはさすがに部屋に投資案内の小冊子はおいてなかった・・・。このホテルだけかなー。
英語は分かるが、中国語・・・。日本語は無し。
まぁ、たしかにアジアは一般的には中華系の人々がコントロールしています。でもなー、分かりやすいよねー。一昔、というか10年、20年前はアジアのいわゆるビジネス客が使う高級ホテルに泊まっているのは、欧米人ビジネスマン+日本人、一部華僑系の「超お金持ち(でもこの人たちは、例外。そして桁違いにお金持ちオーラがでている)」というのが普通でした。
ところが、最近はアジアのホテルに行っても、値段が高いところに泊ってる日本人出張者の数がめっきり減っています。数が減っただけで、中級に流れているならまだしも、恐らく数自体も減っている感じ。
一方で、台頭してきているのが明らかに中華系の普通のビジネスマン、インド系そして韓国人。それからアジア人ではあるのだろうが国籍不明の人々や中東系・・・。つまり、文字通り「ミックス」、最近日本が真剣に取り組まないといけないという意味の言葉だと「ダイバーシティー」です。
>>次ページ 高度な英語なんて本当に関係ない。大事なのは気力と気迫
■高度な英語なんて本当に関係ない。大事なのは気力と気迫。
イイタイコトはシンプル。高度な英語なんて関係ない。大事なのは気力と気迫、っていう一言です。ただし、関係ないって言うために、最低限の理解力や語彙は当然必要です。でも、それは半年死ぬ気でやって到達できる範囲でまずは十分。これは日本人も含めていざとなるとできているという実績があります。
とはいえ、金融系では未だに海外にでても日本語だけで仕事をしようとしていて、という話はよく聞きますよー。5年間ニューヨークに赴任して、英語が本当に使えるようになった(イイタイコトを超えて、高度なレベルまで)のは奥さんだけってのは、本当によく耳にします。
第2回で書きましたが、少なくともアジアにいる限り、英語力ではなく、「地頭力」そしてイイタイコトをしっかりと他人に伝えようとする気力と気迫。例え相手が分かっていようが、いまいが、自分がイイタイコトを伝えてやるという精神力です。
これ、皆がみんな狩猟民族みたいに、ひじで押し合ってるっていうのに近いかもしれません。ひじで押し合うといっても、これが分かりやすいアングロサクソン流ではなくて、アジア流です。
例えばタイやベトナム等では、マナーは非常に重視されます。人当たりもかなりソフトだし、目上とのコミュニケーションは日本人以上にソフトに感じられます。ただ、忘れてはいけないのは、コミュニケーション一般と、仕事で「イイタイコト」を通すためにかける時間と気迫。ここ、誤解されているところが多いと思いますよ。
失われた10年どころか、多分20年の間日本企業に勤める皆さんの基本的なコミュニケーション力やマネジメント力は一切進歩していないというのが私の結論です。日本の経営者という点では、柳井さんや孫さんは例外。三木谷さんは多分アジアでは「ちょっといい感じ」程度の普通の経営者かなーというのが、失礼ながら私の実感です。
そもそも「日本企業の役員や社長」が、自分の会社じゃないところで本当に経営ができるのか・・・。私は若干、というかかなーり疑問です。っていうか多分無理だと思います。
MBA等の経営のABCを知っている、知っていないの問題でなく、ビジネス=競争への向かい方と同時に、多様な人々をリードすることという2点で、現在のところ絶対的に日本人は劣っています。まだ皆が日本企業を相手にしてくれるのは、たまたままだ日本企業の事業規模がそこそこ大きいからだけの理由だということを肝に銘じておくべき。
こうしてアジアで仕事をしていると、地頭が良い人々(日本人にもいますが)が、チャンスをもらい、そのチャンスを活かすべく、がーつがっつと仕事してます。男女問わず。一見おしとやかで線の細い女性も、主張するときの迫力は般若のように見えるときがあります。みんなそんなもんだと思って仕事してます。
こうした中で、そもそも行っていることが分からない=最低限の英語理解力、そして「イイタイコト」もはっきりしない、または何を考えているのか分からないようでは全く相手にされない。。。
一度「自分が突然日本企業でない企業の、日本以外の拠点」に転職して、そこの上司や部下を相手に同じような仕事がこなせるか考えてみてください。
今、アジアで活躍しているアジア人(少数のできる日本人も含め)は、明日から別の地域の別の会社に入っても、速やかに成果を上げつつ、組織をひっぱるだけの気概と実力を持っています。
今回の結論:多様性の中で、自分のイイタイコトが言えない人は存在しないも同じ。