ここがポイント-会社を伸ばす中小企業の採用戦略:第1回 採用活動の心構え(1)

2011年2月10日 14:29

■はじめに~採用活動とは~

 採用活動は、単に人を雇うだけの活動ではなく、大切な経営資源の一つである「ヒト」を獲得するための投資活動で、会社の成長につなげるための活動です。こういう言い方をすると、「そんな事は当たり前」とおっしゃる方は沢山いると思いますが、実際の採用活動を拝見すると、そこから逆行しているのではないかと感じさせるようなケースを見かけます。

 採用活動というのは、他社と比較する機会が案外持ちづらく、自社での経験を踏まえながら自らの創意工夫で進めていることが多いものです。良きにつけ悪しきにつけ、自分たちのやり方を持っていて、特に中小企業の経営者や人事担当者においては、「私たちはこうです」というこだわりが強いように感じます。

 会社独自のやり方は大変重要ですが、採用活動においてはその表現方法が適切でなかったり、相手にとって一方的だったりと、今一つうまくいっていない場合も多く、なおかつこだわりが強いがゆえに、自分達ではなかなか直せないという会社を多々見受けます。ただそんな会社でも、ちょっと意識を変え、基本を見直すだけで採用活動の質を大きく改善できるのも事実です。

 本コラムは、主に中小企業で採用活動に携わる方々に向けて、自社の活動を見直したりこれから始める上での参考材料として頂くことを目的としています。本コラムが少しでも参考になれば幸いですし、「そんな事はとっくにわかっている」という方も、今一度自社の活動を確認して頂く機会になれば有難く思います。

 初回は、「採用活動の心構え」として、お話を進めたいと思います。


■「どうせ中小企業だから」のコンプレックス

 採用活動支援でいろいろな企業にお話を伺っていると、「どうせ中小企業だから大手にはかなわないよ」とおっしゃる方が、思いのほか多くいらっしゃいます。特に新卒採用の場面が多いのですが、「うちより大きい会社に決まれば、そっちを選んで当然でしょ!」と言われる方もありますし、「彼に内定を出しても、どうせ来ないからあきらめよう」などと言われることもあります。果たして本当にそうなのでしょうか。

 私は就活中の学生さんや社会人の方々とお話する機会もありますが、そんな中で聞いていると、それは勝手に思い込んでいるだけのコンプレックスに思えて仕方ありません。

 就活中の人たちからすると、会社に入るために求人応募して選考を受けるという事は、思った以上にパワーを使います。ですからそもそも入社する気になれない会社に応募する余裕はありません。応募の有無を決める段階で、少なくとも自分の中でのベスト5くらいに入っていなければ、その会社には応募しないのではないかと思います。また最終選考まで残るとすれば、意中の会社のベスト3くらいではないでしょうか。選考に参加しているという事は入社意思があるという事で、むしろ自信を持つべきだと思います。

 もちろん優先順位は状況変化とともに揺れ動きますから、他社決定や途中辞退ということはありますが、それは決して「中小企業だから」という理由ではありません。そのようなコンプレックスは持つべきではないですし、もし辞退者が多いなどの事象があるならば、他の理由を考える必要があるでしょう。

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■採用活動は投資活動であり、広報宣伝活動でもある

 先に「採用活動は経営資源を獲得するための投資」と言いましたが、中小企業の場合はどうしても欠員補充や増員という観点で、「その時にある仕事や見通せる仕事に人をあてがう」という事に傾きがちになり、投資という要素を忘れがちの傾向があります。 

 もちろん大企業のようにはいきませんが、それでも人員構成、年齢構成、人材育成といった中長期的な視点もできる範囲で考慮することは必要でしょう。「採用活動は投資である」という事は、常に意識しておく必要があると思います。

 また採用活動は、実は企業そのものの広告宣伝活動という要素も持っています。募集広告を出した途端に、いろいろな所から営業電話が入るようになったご経験はありませんか? 募集広告は単に求職中の人だけでなく、直接間接の顧客や取引先、新しい取引先を探している業者、競合他社やライバル会社、企業研究や調査といったことで、こちらが想定しないような非常に多くの人たちから見られています。

 採用を行うという事を外から見れば、相応の業績を上げていると見られるでしょうし、募集背景からは、新規事業を立ち上げる、仕事を受注したなど、見方によって様々な情報が得られます。逆にこちらはそのような情報を発信した事になるという意識を持ち、できればこれを利用していくことです。企業イメージそのものの発信にもつながるということを、理解しておく必要があると思います。

 次回は、主に応募者との接し方での心構えについて、お伝えしたいと思います。

 ※次回コラムは来月中旬に掲載の予定です。

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